Stripe は、日本を含む世界各国のビジネスリーダー約2,000人を対象に、価格戦略の最新トレンドを調査し、レポートを発表した。

最新の価格戦略ガイド
同レポートでは、急成長企業が採用するいくつかの価格設定モデルを紹介している。
- ハイブリッド料金体系:月額固定のサブスクモデルに追加の従量課金を組み合わせるなど、2つ以上の価格モデルを組み合わせた複合モデル。
- 従量課金の料金体系:顧客が使用した分だけを支払う「ペイ・パー・ユース」または「消費ベースモデル」。
- ユーザー数課金型(シートベース)価格設定:製品やサービスにアクセスできる個々のユーザー(シート)数によってコストが決定されるモデル。
- 成果連動型価格設定:製品やサービスの使用によって達成された成果や結果に基づいて顧客に請求するモデル。
- ダイナミック・プライシング:リアルタイムの市場需要に応じて製品やサービスの価格が柔軟に変動するモデル。
価格設定において急成長している企業を際立たせる特徴
同レポートでは次の内容が新たに明らかになった。
- ハイブリッド型価格設定の採用:急成長企業は、予測可能な収益と柔軟性のバランスを取るため、純粋なサブスクリプション型からハイブリッド型(サブスクリプション+従量課金など)の価格設定へと移行。企業がハイブリッド型価格設定を使用する割合(57%)は、グローバル平均(36%)よりも大幅に高くなっている。一例として、コラボレーションデザインプラットフォームを提供する「Figma」では、従来のユーザー数課金型価格設定によるサブスクリプションと、新しいAI機能に対応した従量課金クレジットの価格設定を組み合わせて提供。
- 価格設定を継続的な実証実験と捉える:急成長企業は、価格設定を一度きりの決定としてではなく、継続的な実証実験のプロセスと見なしている。実質、過去2年間に3回以上も価格変更を実施した割合は、グローバル平均(33%)の2倍(67%)に達した。
- 顧客の成果と価格設定を連動させる:同調査で回答したビジネスリーダーの77%が「顧客は成果連動型の価格設定を望んでいる」と考える一方で、実際にそれを提供しているのは32%に過ぎないことが判明。急成長企業はこのギャップを埋めるため、顧客の「サービス使用量」の定義を継続的に修正し、顧客が受け取る価値をより良くする努力を続けている。
- AIエージェントの価格設定に成功:急成長企業はAIエージェントを提供する傾向が強い。価格設定にも自信を持っており、成果連動型や作業ベースの価格設定といった、洗練されたモデルを使用してエージェントがもたらす価値を的確に捉えている。カスタマーサービスプラットフォーム「Intercom」は、柔軟な請求プラットフォームを活用。サブスクリプションの階層型プランと従量課金の料金体を組み合わせ、新しいAIエージェントの価格設定を急速に進化させた。
- AI搭載のダイナミック・プライシングツールを活用:急成長企業は、AI搭載のツールを使用して価格設定の実験を自動化・加速させており、他の企業に比べてダイナミック・プライシングやパーソナライズされたプランの提供といった戦略を高い割合で実施している。急成長企業による、パーソナライズされたプラン提供の採用率が35%なのに対し、グローバル平均では24%。
AI や価格戦略トレンドへの対応に遅れが見える日本企業
日本の調査結果では、グローバル平均との間にいくつかの顕著な違いが見られた。特に、自社の価格設定が収益や顧客の目標に「適合している」と感じている日本企業はわずか28%にとどまり、グローバル平均(58%)を30ポイントも下回っている。加えて、AI 製品の提供を「検討していない」企業は42%(グローバル平均20%)。また、ダイナミック・プライシングをトレンドと捉えている企業は55%(グローバル平均80%)で、AIや最新トレンドへの対応の遅れも浮き彫りになった。これは、日本市場において価格設定の最適化やAIの収益化を加速する柔軟なソリューションが特に求められていることを示している。
さらに、価格設定変更の障壁として「時間やリソースの不足」を挙げた日本企業は26%。グローバル平均(11%)の2倍以上となった。AIの収益化に関しても、AIエージェントが提供する価値をどう測定すべきか「まだわからない」と回答した企業が27%(グローバル11%)に上る。これは、洗練されていながらも使いやすく、価格体系を容易に管理・変更できる、柔軟なソリューションの必要性を示している。
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