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ディープテック「事業化」への道筋

なぜディープテックは事業化が難しいのか。現場から見える4つの「構造的課題」

第1回

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2.技術シーズと市場の“ミスマッチ”:「死の谷」を越えられない本質的理由

 新しい知識の形成を目的とする「基礎研究」から、概念実証(PoC)完了までの資金ギャップは、よく知られるように「死の谷(Valley of Death)」と呼ばれます。

内閣府「TRLの定義」を基に筆者作成
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 欧州の調査では、この段階を突破できる案件はわずか11%。日本にいたっては8%程度と推計されています。要因の1つは、PoC以降に必要となる10億〜30億円規模のリスクマネーの不足です。英国のBritish Patient Capitalのような「忍耐資本(Patient Capital)」を供給する仕組みが海外では整いつつありますが、日本はシリーズB以降の大型資金供給がまだ脆弱です。

 さらに深刻なのが、技術起点すぎる「技術プッシュ型」の弊害です。市場課題とのフィット(PMF)を十分に検証せぬままPoCへ進むため、顧客不在のまま資金が枯渇するケースが散見されます。技術を市場言語に置き換える「翻訳者」と、長期志向の投資家を同時に確保することが、死の谷を浅くするカギとなります。

3.大学・研究者が抱える現実:研究と事業を阻む「慣習の壁」

 ディープテックの源泉である大学側にも、3つの特有の課題があります。

 1つ目が「教員評価制度」です。多くの大学では、論文数や科研費の獲得額といった学術的成果が評価の中心であり、社会実装などの実践的成果は十分に評価されません。

 2つ目が「キャリアの硬直性」です。文部科学省の調査によると、スタートアップのCxO(経営幹部)を経験した後に大学へ戻る「クロスアポイントメント制度」の利用者は21%に留まります。ビジネスと研究を往復する柔軟性が乏しいため、どうしても学術偏重の力学が働きます。

文科省「大学等における産学連携等実施状況について令和5年度実績」を基に筆者作成
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 3つ目として「知財運用」もボトルネックになります。特許のライセンス料がスタートアップの重荷になる例が後を絶ちません。ある大学発スタートアップでは、創業時に資本金を上回る高額のイニシャルフィー(契約一時金)を要求され、分割払いで急場をしのいだという実例もあります。

 こうした壁を越えるには、研究者への事業開発教育に加え、評価制度や知財運用の抜本的な柔軟化が必要です。

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4.共創型アプローチの進化:“伴走”で溝を埋める仕組み

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この記事の著者

金子 佳市(カネコ ケイイチ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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