単一事業から多角化へ──MIXIのビジョンと「FP&Aインテリジェンス部」の誕生
池側千絵氏(以下、池側):従来の管理会計の教科書では、事例は製造業中心でした。しかし、これからのFP&Aは幅広い業種において貢献します。工場や在庫を持たないサービス業である成長IT企業が単一事業から多角化へ移行する中でのFP&Aの役割を探ります。MIXIの事業戦略の全体像とミッションをお聞かせください。
島村恒平氏(以下、島村):当社は求人サービスで創業し、SNS「mixi」、スマホゲーム「モンスターストライク(モンスト)」と発展し、現在はその収益を原資にスポーツやライフスタイル領域へ投資しています。一見脈絡のない多角化に見え、「コングロマリット・ディスカウント」を指摘されることもあります。
しかし当社には「豊かなコミュニケーションを広げ、世界を幸せな驚きで包む。」という不変のパーパスがあり、親しい人との空間にサービスを投入する核となる強みを水平展開しているのです。この多角化で経営管理の難易度は跳ね上がりました。2023年にCFOとなった私の最大のミッションは、複雑な事業ポートフォリオを透明化し、資本コストを意識した経営管理体制を確立することです。
新卒で現U-NEXT HOLDINGSに入社後、コンサルティングファーム、グリー株式会社、スタートアップ企業等を経て、2016年4月にミクシィ(現MIXI)入社。一貫して経営企画・事業モニタリングに従事し、経営推進本部長や執行役員を経て、取締役 上級執行役員 CFOに就任。グループ全体の財務戦略、M&A、事業ポートフォリオマネジメントを統括する。
照井英人氏(以下、照井):私はNECでの管理会計やアニメ会社での経営戦略部署の立ち上げを経て、約3年半前にMIXIに入社しました。IT・サービス企業では、人の配置やマーケティング投資が成長ドライバーとなります。単なる数字の集計屋ではなく、事業責任者の「真のパートナー」として財務的視点から支援する組織作りを目指しています。
NEC(日本電気株式会社)にて海外向けバイオメトリクス事業の事業管理・管理会計を担当後、3DCGアニメーション制作会社で経営戦略およびFP&A機能の立ち上げを主導。2021年にミクシィ(現MIXI)入社。2024年にFP&Aインテリジェンス部を立ち上げ現職。子会社(TOKYO-BAYアリーナ)の取締役も兼務。
関野直博氏(以下、関野):私は防衛省で装備品調達や予算管理に携わった後、2021年に入社しました。現在はFP&Aインテリジェンス部内のデータサイエンスグループのマネージャーとして、AIやビッグデータを活用しFP&A業務のDXを推進しています。
防衛省にて装備品の調達、予算管理、原価計算業務に従事した後、2021年12月にミクシィ(現MIXI)入社。管理会計や全社予算策定を担当後、現在はFP&Aインテリジェンス部内のデータサイエンスグループにてAI・BI・データ基盤を活用した経営管理業務のDXと高度化を推進。
経営企画と経営管理の曖昧さを打破する組織再編と「FP&AI」に込めた意思
池側:なぜ今回「FP&Aインテリジェンス部」という専門組織へと再編されたのでしょうか。
島村:従来の日本型「経営企画」と「経営管理」は責任範囲が曖昧になりがちでした。また、資本市場との高度な対話が求められる中、単なる予実管理のままでは経営スピードに追いつけません。そこでミッションを「数値と分析で経営・事業を支援する専門機能」と再定義し、社内外へ姿勢を示すため「FP&AI」の名を冠しました。
現在、経営推進本部の下には「経営企画部」「FP&Aインテリジェンス部」「グループ会社管理部」を配置しています。経営企画部がガバナンスや横断課題を担当するのに対し、FP&Aインテリジェンス部(FP&AI)は財務・事業数値の定量分析と将来予測に特化させています。部署名の「インテリジェンス」には、AI技術を極限まで活用して業務革新を進めるという意味も込めています。
照井:2025年4月に発足した当部署は約13名で構成されています。データサイエンスチームが内部に併設されていることこそが最大の強みです。



