AIによる「定型業務7割削減」と「アクセルを踏むFP&A」への転換
池側:FP&A組織内にデータサイエンスグループがあるのは先進的ですね。具体的な取り組みをお聞かせください。
関野:「AI活用」と「データマネジメント」の2軸で進めています。大きな成果が、ログラス社と共同開発したAIエージェント「ALICE(Analysis & Live Insight for Corporate Execution)」です。
従来、毎月2〜3日かけていた予実差分コメント(数百ヵ所)の作成が、「ALICE」によりボタン一つで一次生成できるようになりました。またGoogle Apps Script(GAS)とAIの連携でスライド作成も自動化し、2026年7月現在、部内で月間150時間程度の作業時間を削減しています。
照井:定型・集計作業の約7割を自動化できたインパクトは絶大です。データの構造化処理が多い経営管理領域はAIと相性が抜群です。定型作業から解放され、リソースを「将来予測」や「事業部との戦略対話」といった高付加価値業務へシフトできました。
関野:データマネジメント面では開発本部と連携し、社内非財務データや経理明細データ、そして各種報告書などの非構造化データを統一的に扱う全社データプラットフォームへの接続を進めています。一方で、LoglassのダッシュボードにおけるAI分析の全社展開も実施しており、コスト急増の要因などを自然言語による対話形式で即座に解析できる仕組みを構築しております。
池側:創出された時間でどのような「新しいFP&Aの実務」をスタートされていますか。
照井:注力事業を中心に12ヵ月先を見通す「ローリングフォーキャスト(継続的業績予測)」を運用し始めています。リスクと上振れ可能性をリアルタイムに定量化し、動的な将来予測を行う仕組みです。
島村:主力の「モンスト」はエンタメ特性が強くボラティリティが高いですが、10年以上のデータ蓄積とAI分析により高い精度で傾向が掴めるようになりました。これによりFP&Aの役割は「予算超過を防ぐブレーキ役」から「成長のために資金を投入するアクセル役」へと変化しました。
成功事例が競輪・オートレース投票サービス「TIPSTAR」です。日次モニタリングで成長の兆候を捉えたFP&A側から「予算枠を拡大しプロモーション費用を追加投入すべき」と提案し、タイムリーにアクセルを踏むことで成長を大幅に加速させました。データに基づいて経営提案する文化を地道に培ってきたことで、攻めの意思決定を実行できた好例です。
池側:まさにFP&Aの理想形ですね。
資本効率を追求する事業ポートフォリオマネジメントの実践
池側:資本効率(ROE/ROIC)を意識した財務戦略とFP&Aの関与についてはいかがでしょうか。
島村:ROEが株主資本コスト(7.4%前後)を上回る状態を維持すべく、配当性向の引き上げ(40%)や機動的な自社株買い(年間75億〜95億円規模)を実行しています。
その上で持続的成長のため、全事業を「売上高成長率」と「資本コスト超過マージン」の2軸で次のように「4ステージ」に分類し、ポートフォリオ管理を強化しています。
- 集中投資事業:次の柱となる事業(積極投資)
- 成長期待事業:段階的に投資
- 安定収益事業:高い収益性で成長原資を提供(モンストなど)
- 要改善事業:資本コスト割れが続く事業
「加重平均資本コスト(WACC)を上回るリターンを生んでいるか」を規律とし、改善が見込めない事業は早期の撤退・売却(カラオケ動画アプリ「KARASTA」の譲渡など)を判断しました。
照井:FP&Aとしては「成長性」「効率性」「投資総量」をダッシュボードで可視化し、ポートフォリオ視点での投資判断を経営陣に提示しています。



