出島組織とは? 定義とその特徴
この本は、出島組織サミット当日のセッションをベースに、再度大幅なインタビューを行い、自分たちの分析を加えたもので、出島組織(出島戦略とも言われる)について俯瞰的にまとめられた、はじめての書物となる。
「出島組織」には、今の日本に必要なインスピレーションがたくさんある。そう感じることが多々あり、刊行する運びとなった。
おもしろくも熱いさまざまなチャレンジに、生きた言葉で、このあとたくさん触れていただくことになるのだが、その前に、前書きとして、出島組織概論をお伝えしておきたい。つまり、そもそも何なの?ってことを。
我々が長年、出島組織に在籍してきた経験と数年かけたリサーチの結果、わかった総論。出島でのサミット当日のオープニングでお話ししたことなので、参加した気分になってもらえるかもしれない。
まず、「出島組織」という言葉は、いつできたか定かではない。2000年頃という人もいたが、30年以上前に書かれた記事も最近発見した。提唱者がいるわけでなく、自然発生的に生まれた言葉との見方が強い。なので、サミットではこのように定義した。
出島組織の定義
長崎の出島のように
(1)本体組織から何かしらの形ではみ出して
(2)新しい価値を生む組織
また、出島組織の特徴としてはこのような点が挙げられる。
- 提唱者がアノニマス。故に権力者がおらず、タイプも自由
- 出島=「自由」「未来」「イノベーティブ」の比喩/象徴と捉えられている
- 比較的着手しやすい仕組み(成果が出るか、続くかは別だが)
- 日本発のコンセプト(オランダ人もおもしろいと言う)
- 出島(組織)と自称する人がうれしそう
自由であると書いたそのタイプ。調べてみると、この点が実におもしろいのだが、同時に、世の中に知られていないことだったりする。出島組織という場合、多くは、大企業のもの、と思われている。例えば、経団連の資料に象徴されるこの部分。
『大企業による「出島」 会社本体から独立し、離れた「出島」形式の異質な組織を立ち上げ、自由にイノベーションを起こす。』(「Society5.0-ともに創造する未来-」経団連 より引用)
メディアについても同様で、例えば毎日新聞の出島組織についての記事はタイトルも『“鎖国”が続く日本企業で「出島」が急増しているわけ』(2019年12月21日)となっており、やはり企業についてだ。
しかし、丁寧にリサーチやインタビューをしていくと、それだけではない。何かを打開したいと思うさまざまなジャンルで多様な形が生まれている。また、「企業の出島」の中でも、必要に応じて、さまざまなタイプが発生している。
結果、サミット開始当時は7タイプに整理したが、再度検証し、今回の本では9タイプに分けた。俯瞰してみると、大きく通底する共通点もありつつ、違った工夫もある。出島組織に属されている方にとってヒントとなり、また、新しいことを起こしたい方には自分の立場でやりやすいタイプを見つけられると思う。この点、ご活用いただけたらうれしい。
また、出島組織は少々前に話題となった「両利きの経営」にまとめられがちだが、実はちょっと違うことも付け加えておきたい。
両利きの経営は、『「経営者」が「既存事業」と「探索事業」を両方見るべき、両利きのように』という手法で、確かに本社が既存事業をやっている間に、出島組織が探索事業をやる、という点では一致する。しかし、出島組織の場合、本体組織の社員と横同士でつながって、経営者が知らない間に新しいものを生んでいるケースもある。つまり、ボトムアップ型の、現場主導の勝手な両利き。出島理論の方が、あり方が自由なのだ。
出島組織はせっかく日本発のコンセプトなのだから、アメリカ発のコンセプト(両利きの経営)にまとめてはもったいない。その点でも、両利きの経営とは似て非なる別物として、先入観なく読み始めてもらった方が良い。
最後に、注目してほしいのは「熱さ」。出島を「出す」のではない。ほとんどの方が自ら「出た」のだ。出る覚悟。出て、新しい地平を開く覚悟。実は、そこが一番のポイントだったりするが、それは読めば自然と、感じ取ってもらえると思う。
新規事業部タイプ:若手社員が突破した、
事業アイデア提案制度第一号
はじめは、出島組織の、おそらく一番数が多いタイプ「企業の新規事業部」から。
最初にお邪魔するのは、本社を新宿に構える野村不動産。だが、この取材ではそっち(本体)には伺わない。向かうは東京都中央区。野村不動産が作った出島「TOMORE(トモア)zero」は、日本橋人形町にある。
話し手
黒田翔太
野村不動産 TOMORE zero 住宅事業本部 賃貸住宅事業部 事業二課長
聞き手
倉成英俊
出島組織サミット実行委員会副会長 株式会社Creative Project Base 代表取締役
──まずわかりやすく、新規事業部が本社から別の場所に飛び出して、出島組織になっているケースをご紹介したいなと思って、最初に頭に浮かんだのが、こちらで。
黒田 ありがとうございます。はい。結果的にまさにそのタイプです。
──本社から離れて、ここで何をされているか、教えていただけますか?
黒田 僕らがやっていることを一言でいうと「コミュニティ運営」です。野村不動産はハード部分の、不動産のものづくりはもちろんすごく得意なんですけど、ソフト部分、つまりコミュニティ運営の方は実証が必要ということで、その部分をここで。
まず最初は、オンラインでコミュニティの運営を2021年8月に開始して。同年11月にコワーキングスペースとして、ここ「TOMOREzero(トモア・ゼロ)」の運営をスタートしました。利用者同士の出会いや交流をサポートするコミュニティオーガナイザーが常駐して、リアルとオンラインの両方で、プライベートとビジネスの垣根がない感じの、ゆるくて濃いつながりを作っています。

