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新規事業は本体から離すことに意味がある──野村不動産の「出島組織」の実践知【書籍抜粋】

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「TOMORE」プロジェクトの始まり:社内提案から事業化へ

──昼間からたくさんの方がいらっしゃいますが(コワーキングだから当たり前か)、居心地良さそうですね。

黒田 そうなんです。集中して仕事できるスペースがあるのはもちろんなんですけど、それ以外に、靴を脱いでソファに腰掛けて過ごせたりとか、壁にアートが描かれたダイニングで大きなテーブルを囲んで、食事や仕事をしながらメンバー同士で交流できたりとか、よりリラックスした状態で、偶発的なつながりを生む工夫をしている点が特徴です。「暮らしの中で働く」をイメージした空間設計になっています。

 なぜ、暮らしの要素を取り入れているかと言いますと、将来的には、シェアハウスとコワーキングスペースが一体になった物件の開発を視野に入れているからなんですね。

──今のお話、理解が追いつかなかったので、少し解説を。

黒田 1階にコワーキングスペースがあって、2階より上には共用リビングと住居。つまり、上に住んで、下で働ける。職住一体の「働く・住む・遊ぶ」がミックスされたシェア型の賃貸住宅。コミュニティ運営のサービスが付いているので、住んでいる方はそこで生まれるいろんな人や活動と出会って、刺激を楽しみながら、自分のネットワークを自然と広げていける。そういった多様な価値観に触れる機会を、生活環境の中で自然に体感できるような新しい居住体験を作っていきたい、ということを目指しているのが、TOMOREプロジェクトなんですね。

 TOMOは「仲間と」とか「共に」、MOREは「もっと」ってことで、TOMORE(トモア)という名前にしたのも、そういうことで。

──なるほどね。まさに新規事業。

黒田 そもそもは、「NEXPLORER(ネクスプローラ)」という野村不動産の事業アイデア提案制度に応募したところから始まったんですね。同世代の頼れる仲間3人でエントリーして、何度も経営層に提案した結果、何とか第一号承認案件として突破できて。

本当にコミュニティ運営で価値を出せるのか、と問われる中で、実際に人形町に拠点を置いて運営事業を行ってみる実証フェーズを、これまではやっていました。

なので、部署的には、DX・イノベーション推進部(新規事業創発を所管)と、賃貸住宅事業部(賃貸住宅開発を所管)という2つの部に同時に籍を置いていました。というのは、最終的に、私の事業が賃貸の住宅モデルになっていくので。両方の事業部を兼務しながら、実際活動する物理的な拠点は人形町みたいな感じでやってきて。

そして、コミュニティもうまく回り始め、目標とする収入の目線もクリアできたので、じゃあもう事業化していこうというステージに立てました。なので、今は賃貸住宅事業部の中に私の事業に特化した組織ができて、そこで事業を推進しています。

本社と離れて活動しているからこそのメリット

──いつも黒田さんはこっち(人形町)にいるんですか?

黒田 行ったり来たりしながら、ですね。事業を進めるにあたっては、野村不動産本社で調整して進めていく必要があるので。

──なぜそもそも、人形町だったんですか?

黒田 住居含めてのコワーキング事業を考えていくと、本社がある新宿じゃないなと。それで、職住がミックスされたベストなエリアを探していたら、人形町にたどり着いた、ということです。なので、本社から離れたいから離れたわけでなく、結果的に。

──離れてみて、どうでした? メリットとかデメリットとか。

黒田 実証という観点で、すごく活動しやすかった。具体的には、PDCAが回しやすかったですね。本社の誰かが常に見ているわけじゃない。でも、見せたい時があるわけで、そういう時に人を呼んで、会社に説明ができる。試行錯誤してる時をじっくり見られてもあまりいいことはないので。

──お母さんに部屋をいつも見られてるとやりにくいのと一緒ですよね。たまたま見られた時だけ勉強してない、みたいな。

黒田 そうですそうです(笑)。そして、いつも見られてると変化がわかりにくい。たまに見るから前回からの比較で、成果がわかる。必要な時に報告して、必要な時に確認してもらえる。本社と離れて活動しているからこそ、そういうことがわかりましたね。

──新しいことや出島組織をやろうという方にメッセージとかあれば。

黒田 新規事業をやるなら、既存事業の組織や枠組みの中だけでは生まれづらいなと、実際やってみて思いました。そこははじめにきっぱり分けてほしいと言ったのは、良かったなと。一般的に既存事業はリスクを取りづらい環境ですが、逆に、新規事業の組織は、新しいことを生まなきゃいけない、ってチカラが働く。なので、チャレンジの流れに乗れるし、後押ししてくれる。つまり、組織の力学も上手く利用しましょう、ってことですかね。事業と全力で向き合い、やり抜くことが大前提ではありますが。

──黒田さんの話は、教科書を読んで、本社から離そう、組織を分けよう、としたのじゃなくて、やってみてわかったというのが、リアリティがあっていいですね。で、最終目標のシェアハウス&コワーキングスペースは、いつできるんですか?

黒田 まだ言えないんですけど。できます。近い将来。できたらお呼びします!

野村不動産 TOMORE zero
東京・日本橋人形町にあるTOMORE zero。オンライン会議がしやすい防音の個室など集中できる場所もありつつ、ソファあり、アートあり、バーカウンターあり、人の距離を縮める工夫が多数なされている。靴を脱いで上がるコワーキングスペースも珍しい。
出島組織というやり方 はみ出して、新しい価値を生む

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出島組織というやり方 はみ出して、新しい価値を生む

著:倉成 英俊、著:鳥巣 智行、著:中村 直史
発売日:2024年02月21日(水)
定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

本書について

ハウス食品、JR東日本スタートアップ、ONE、みんなの銀行、東京都庁、北海道大学、パーソルキャリアなど出島組織の成果を本体組織へうまく還元した20のチームが教える日本初の変革のヒント集です。

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この記事の著者

大久保 遥(Biz/Zine編集部)(オオクボ ハルカ)

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