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デザイン組織の経営貢献を可視化──一橋大学大学院 鷲田教授が語る「D-KPI」と「ROE」の相関関係

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D-KPIの「提案力・情報提供」が翌年のROE向上に直結する

 これまで多くの国内研究は、「デザイン投資が経常利益(短期的な売上や利益)にどう貢献するか」という短期フローの視点で分析を行い、因果関係の証明に苦戦してきた。デザインが世に出て市場で結実するまでにはタイムラグがあるためだ。

 そこで鷲田氏は、2023年から2024年にかけて大きな発想の転換を行った。デザイン投資を単なる経常利益を生むための投入と考えるのをやめ、株価時価総額やPBR、自己資本といった「企業資産との関係」として捉え直したのである。

 その結果、2025年に大きな発見がもたらされた。D-KPI指標と相関を分析したところ、投資家が重視する財務指標であるROE(Return on Equity:自己資本利益率)と統計的に有意な正の相関関係を持つ特定の指標が突き止められた。

 「7つのD-KPI指標のうち、間違いなく誤差ではない(1%水準で有意)として計測できたのは、『成分3:提案力・情報提供』だけでした。この成分は、翌年のROEに対してプラスの0.606という非常に強い正の相関を示しています」と鷲田氏は語る。

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資料提供:一橋大学大学院経営管理研究科 鷲田祐一教授/クリックすると拡大します

 「調子が良い企業だからデザイン組織の評価も高いのではないか」という逆因果の懸念についても、時系列データを追跡したパス解析によって検証が行われた。結論として、過去の業績がデザイン組織の活動を活発にする側面もあるものの、それ以上にデザイン組織による提案・情報提供の活発さが、1年のタイムラグを経て翌年のROEを力強く押し上げる相関循環が存在することが統計学的に証明されたのである。

 では、なぜデザイン組織の「提案力・情報提供」がROEという全社的な財務指標の向上につながるのだろうか。鷲田氏は、Jonsen et al. (2015)の「自己資本利益率が高い企業は提供価値の言語化・可視化が進んでいる」という先行研究を挙げ、次のように仮説を提示した。

「各事業部や研究開発部門が個別に進めている複雑なプロジェクトに対し、デザイン組織が介入することで、その企業の真の提供価値が『可視化・言語化』される。非財務情報の可視化問題は重要な経営課題の1つであるが、デザイン組織の活動が社内の意思決定を迅速化し、結果として自己資本を効率的に運用して利益を生み出す体質、すなわち高いROEへとつながっている可能性が考えられます」 (鷲田氏)

 本研究は、長年アートや感性の領域として定量化を拒んできた「デザイン」という営みを、他部署による多面的評価(D-KPI)を介することで、ROEという最も厳格な資本効率の指標と結びつけることに成功した画期的なパラダイムシフトである。

 「見える化」されたデザイン組織は、個社ごとの経年変化データを見ても確実にそのパフォーマンスを向上させていく傾向がある。一橋大学では、2026年現在も「第5回D-KPI調査」を進行中であり、参加企業にはこれらの予測モデルや強み・弱みの分析結果が無料でフィードバックされている。自社のデザイン投資の妥当性を経営層にデータで証明し、真のデザイン経営へと舵を切りたい企業にとって、この共通指標の活用は強力な武器となるはずだ。

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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