世界で勝つ日本企業へ! 松田氏が新規事業に挑む3つの理由
松田氏はNECに入社後、長く通信事業に携わり、2008年からの米国企業買収にともなう駐在で、海外企業の圧倒的なスピードやスタートアップのカルチャーに直面した。この経験が、現在の新規事業にかける原動力となっている。帰国後は通信系の新規事業開拓を担当し、現在は全社の事業開発をリードするトップとして活動している。通算16年間、新規事業の最前線に立ってきたエキスパートだ。
同氏が事業開発に挑む理由は3つある。1つ目は世界との差を埋め、日本企業が勝つ力を高めること。2つ目は、技術が事業化されず埋もれてきた悔しさから社会へ実装すること。3つ目は人々の熱量を組織の仕組みで加速させることだ。
「かつて国際競争力ランキングで1位だった日本は、現在35位まで順位を下げています。世界時価総額トップ50のほとんどを海外勢が占める現状に強い危機感を持っています。日本企業やスタートアップが世界へ進出する時代を作らなければ、競争力は向上しません」
物理空間やリアルな現場が持つ価値をビジネスへと変換し、日本の新しい時代を創る。その強い志を胸に、松田氏は自社の組織改革へと乗り出した。
停滞していた新規事業。プロジェクト67件の“ゾンビ化”の衝撃
NECが組織的な新規事業を始めたのは2013年である。試行錯誤の末、2018年からは事業開発プロセスやオープンイノベーションの仕組みが立ち上がり、拡散の時代を迎えた。しかし、属人的な成功に依存していたため、牽引していた人材が離脱すると事業開発は次第に停滞していく。
2024年に松田氏が部門トップに就任した際、内部の状況は深刻だった。リストには3つの組織が統合されたこともあり67件ものプロジェクトが並んでいたが、大半が検証フェーズで停滞していたのだ。
「内容を見ると厳しいものが多く、実現が危ぶまれるものばかりでした。プロセスは回っていても、出口まで辿り着いたプロジェクトは皆無で、事業の“ゾンビ化”が起きていたのです」
さらに致命的だったのが、組織のエンゲージメントスコアである。当時の数値は低迷し、人材の熱意が失われた“飼い殺し”状態にあった。見込みの低い事業が乱立する荒野のような現場を前に、松田氏は組織を立て直すための大なたを振るう決断を下すこととなる。
