生成AIの進化とビジネスへの影響、データ活用における本当の課題
Biz/Zine編集部・栗原(以下、栗原):AIにより業務の効率化や高度化が進む中、その影響は財務会計や管理会計の領域に大きな変化をもたらしています。AIがビジネス全体に与える影響についてどのようにお考えですか。
ピーター・J・ドーラン氏(以下、ドーラン):現実として、AIはサプライチェーン、オペレーション、セールス、マーケティングなど、ビジネスのあらゆる側面に多大な影響を与えます。これまでアクセスや活用が困難だった社内外の膨大なデータに、極めて容易にアクセスできるようになるからです。
しかし、現在の本質的な課題は、AIがもたらす膨大なデータやインサイトを、チームが「実行可能なアクション(Actionable Insights)」に落とし込めるかどうかです。AIは人間の持つ「判断(ジャッジメント)」を下せませんし、ビジネスに影響を与える微妙なニュアンスをすべて理解しているわけでもありません。AIが優れたデータインサイトを提供してくれるからこそ、それを完成させるための「人間の要素(ヒューマンエレメント)」が不可欠になります。
AI投資でリターンを得られている企業はわずか21%──組織の「準備不足」を解剖する
栗原:収集されたデータの分析はAIが担えるものの、それに基づいた意思決定や具体的な行動は人間が行わなければならないということですね。では、組織や人間側にはどのような課題があるのでしょうか。
ドーラン:IMAが「CFO Alliance」と共同で行った2026年発表の最新調査[1]によると、世界中の多くの財務組織がすでにAIを導入しているものの、投資に対して意味のあるリターン(ROI)を得られているのは、わずか21%に過ぎません。テクノロジー自体に問題があるのではなく、組織側の「AIに対する準備(レディネス)」が不足しているのです。この準備不足には、3つの大きな壁があります。
AI導入を阻む「3つの壁」
(1)データの分断(場所と品質の問題)
特に大企業ではデータがセグメント化されており、子会社ごとに独立したデータベースを持っているため、企業全体でつながっていません。すべてのデータがどこにあるかを特定するだけでも非常に困難です。また、外部ベンダーが保持するデータも多く、企業のファイアウォールの外側に存在するため、一元管理を阻む要因になります。
(2)レガシーシステムと個別ツールの乱立
企業は基幹システムを導入していながら、特定の目的のために独自のITシステムを個別に構築したり、個別のSaaSを導入したりしています。これらが適切に統合されず、改修を重ねるうちに当初の連携が失われ、データをクリーンに保つことができなくなっています。
(3)人(ピープル)のスキル不足
AI主導の環境におけるデータの扱い方は、従来とは大きく異なります。10年前には存在しなかった「プロンプトエンジニアリング(AIから望ましい出力を得るための指示出し技術)」のようなスキルが必要ですが、これをこなせる人材は非常に稀であり、その多くはビジネスではなくテックの専門家です。
様々な専門職(プロフェッショナル)で今必要なのは、全員のスキルを向上させ、「AIを使いこなせる状態」にすることです。IMAでは、財務プロフェッショナルのAIスキル向上を支援する「AI in Finance」に関する独自のマイクロクレデンシャル(短期専門認定資格/6コース・約15〜20時間の自己ペース学習)や、そのほか様々なデータ分析・データ管理に関するコースを提供し、教育・スキルのギャップという課題へのアプローチを強化しています。
[1]IMA and CFO Alliance『Technology and Finance at the Crossroads Why 63% of finance functions have deployed AI but only 21% report clear ROI — and what the leaders getting it right are doing differently.』(Jun 9, 2026)
