初代デジタル相が語る政策転換。社会実装を加速する「政府調達」
米倉誠一郎氏(以下、米倉):本日は強力なパネリスト陣とともに進めていきます。さて、まずは平井さん。初代デジタル大臣として日本の制度や調達の仕組みを大きく変えてこられましたが、現在のスタートアップ政策の現在地についてお話しいただけますか。
平井卓也氏(以下、平井):はい。私はかつて科学技術担当大臣として「HIRAI Pitch」と銘打って全国を回り、エコシステムの拠点形成に取り組んできました。そうした中で2022年からは「スタートアップ育成5か年計画」が始動し、まもなく一つの区切りを迎えます。成果としては、スタートアップが25,000社、大学発ベンチャーが5,000社を超えるなど裾野は広がりました。ただ、ユニコーン100社の目標に対して現状は8社、投資額も10兆円の目標に対して8,000億円にとどまっており、次の5か年計画では大きな政策転換を考えています。
米倉:なるほど。そうすると、数の面では成果が出ている一方で、規模や資金面ではまだ大きな課題が残っているわけですね。この状況をどう打開していくお考えですか。
平井:これまでは研究開発の「補助金」が中心でしたが、今後は政府や地方自治体の「政府調達」の中に複数年でスタートアップの製品を組み込んでいこうとしています。社会課題解決を目指すゼブラベンチャーなどに対し、自治体が補助金を出すのではなく直接仕事を発注する仕組みです。米国ではスタートアップがGDPの40%超を占めるともいわれていますが、日本はまだ4%程度。未来を作れるのはスタートアップしかありません。米国のスペースXが国の発注と伴走で伸びたように、社会実装を最速で実現できる環境をつくることが最大の狙いです。
大企業とスタートアップは混ざらない? KDDIが説くスピンアウト戦略
米倉:そこで続いて髙橋さんにお伺いします。先ほどGDP貢献度4%という話が出ましたが、KDDIも遡れば、電電公社の独占市場に風穴を開けようと、京セラやソニー、セコムなど当時の勢いある企業が集まってできた会社ですよね。大企業から新しいものを生み出す可能性についてどうお考えですか。
髙橋誠氏(以下、髙橋):実は私自身、京セラに入社して3ヵ月で、たった10人の立ち上げ期の第二電電(現KDDI)へ出向・転籍させられました。一部上場企業に入ったつもりがスタートアップに転げ落ちた感覚でしたが、そこから数十年を経て、今やグループで7万人の企業に成長する歴史を見てきました。そうした経緯があるからこそ、私は「スタートアップファースト」の精神を非常に大切にしています。では今の大企業に何ができるかといえば、筆頭は圧倒的な投資力です。KDDIも設備投資に年8,000億円、成長投資に3年で1兆円をかけます。これを日本の課題解決にどう向けるかを示すことが重要です。
米倉:確かに、そうした膨大なリソースを持つ大企業とスタートアップが組めば大きなシナジーが生まれそうです。とはいえ実際のところ、直接的なM&Aは苦戦することも多いと聞きます。
髙橋:ええ、よく大企業はスタートアップをM&Aをしろと言われますが、そこにはどうしても無理が生じます。なぜなら、長年メンバーシップ制でやってきた大企業の文化と、スタートアップの文化を混ぜてもなかなかうまくいかないからです。だからこそ、私が最近正しいと思っているのは、大企業が新規事業をスピンアウトさせて別会社を作り、その新しい会社を通じてスタートアップをM&Aし、融合させて大きくしていくアプローチです。これなら、価値あるスタートアップの力を存分に活かせるはずです。



