US-CMAが日本企業の「経営企画」をアップデートする
栗原:ここからは、IMAが推進する「US-CMA(米国公認管理会計士)」資格について伺います。この資格は、伝統的な「CPA(公認会計士)」とどのように異なるのでしょうか。また、日本のFP&A担当者にとってどのような優位性がありますか。
ドーラン:資格受験を検討しているビジネスパーソンから「CPAとCMAのどちらを取るべきか」と聞かれたら、私はいつも「両方取るべきだ」と答えています。目的が異なるため、どちらか一方を選ぶという性質のものではないからです。
| 資格 | 主な焦点・役割 | 対象となる主な環境 |
|---|---|---|
| CPA(公認会計士) | 過去の報告(財務報告・制度会計)、コンプライアンスの担保 | パブリック・アカウンティング(監査法人など)、企業の財務報告部門 |
| US-CMA(米国公認管理会計士) | 将来を見据えたFP&A機能、未来に向けた意思決定の支援・戦略的思考 | 企業内のコーポレート環境、経営・ビジネスリーダーシップのサポート |
私自身、MBA取得後は「フォーチュン500企業のCFOになること」を目標に掲げ、まず財務・経理の基礎を学び、CPAライセンスを取得するためにKPMGに入りました。そしてCPAを取得した直後、今度はCMAを取得したのです。キャリアの初期はCPAが役立ちましたが、キャリアの後半でビジネスリーダーとして課題に対処し、戦略的に考える段階においては、CMAの学びの方が圧倒的に重要になりました。
US-CMAの試験は、単にルールを暗記するだけでなく、理論をどう実務に適用するかを証明させるために「ケーススタディ」を組み込んだ実践的な内容にしています。1972年の創設以来、発行されたCMA証書は現在累計14万件を超えており、世界150ヵ国以上に会員が広がるなど、その成長は指数関数的です。
身につくスキルだけでなく、世界的に認められた資格として、国内外での転職やキャリアアップの「パスポート」となっています。さらに、キャリアが進んでより戦略に特化するようになった方向けには、戦略・競争分析の専門スキルを証明する「CSCA(戦略・競争分析認定)」や、初期キャリア向けに財務・管理会計の基礎力を証明する「FMAA(財務・管理会計アソシエイト資格)」も提供しています。

日本市場への本格投資と、これからの経営幹部育成への提言
栗原:日本市場における今後の展開や、コミュニティ形成に向けたパートナーシップについてお聞かせください。
ドーラン:日本では伝統的に財務報告が一般的な役割であり、FP&Aは比較的新しい、これから台頭してくる役割であるという現状があります。しかし、US-CMAはFP&Aチームに必要なスキル構築を自然に補完できるため、私たちは日本市場への本格的な投資を決断しました。
その最大のステップが、2025年6月1日より開始された「US-CMA試験の日本語化」です。これにより、これまで英語という言語の壁から受験を躊躇していた、約9割とも言われる日本の優秀なプロフェッショナルたちに対して、グローバル基準の扉を大きく開くことができました。
今回の滞在中にも、日本管理会計学会(JAMA)と覚書(MOU)を締結したほか、日本の米国公認会計士などの有資格者団体と面会し意見交換をしました。今後は大学との連携、日本企業への導入促進、日本語教材の拡充などを通じて、日本国内における管理会計人材の育成をさらに力強く推進していきます。
栗原:日本の大手企業に所属するビジネスパーソンへUS-CMAを浸透させるためには、2つのルートがあると考えています。1つは、すでに経理・財務部門で働くCPAなどの有資格者がステップアップするケース。もう1つは、まさに当メディア『Biz/Zine』の読者層である、財務のバックグラウンドは持たないものの、将来的にCEOやCFOを目指す40代前後のミドルマネジメント層が取得するケースです。どちらの層からも非常に強い関心やフィードバックが得られるのではないでしょうか。
ドーラン:非常に興味深い視点ですね。現在、日米ともに会計の道を志すビジネスパーソンや学生の減少が課題になっています。「地味な職業」だと思われているからですが、それは過去の「過去の数値を報告・監査する」という財務報告のイメージが強いからです。
これがビジネスリーダーシップやFP&A、データ駆動型の意思決定支援の領域になれば、一気に面白く、エキサイティングな(セクシーな)職業になり、志望者も増えるでしょう。単なる「報告や管理」だけではなく、事業を「ドライブ」する存在として、日本のFP&A組織と未来の経営リーダー育成を全力でサポートしていければと思います。
