KDDIが描く「AI前提社会」と日本が直面する2つの課題
会見の冒頭、KDDI 事業創造本部長の長谷川渡氏は、同社がこれまで通信を中心に社会インフラ事業者としての役割を磨き、事業を拡大してきた軌跡を振り返った。現在、KDDIは「AI前提社会」の入り口に立っており、企業の事業成長を支える「AI労働力」と、暮らしや体験を変革する「AI生活力」の社会実装が重要であると語った。
「このAI前提社会において、私たちはあくまでお客様を起点として価値提供にこだわっていきます。企業の事業成長を支えるAI労働力、そして暮らしや体験を変革するAI生活力、これらをいち早く社会に実装していくことが重要だと考えております」(長谷川氏)
長谷川氏によれば、この大きな転換期において日本は「世界で戦えるAI企業の創出」と「AI依存によるデスキリングの懸念」という2つの課題に直面しているという。今回の記者発表では、KDDIがこれらに対応するための新たな発表がなされたが、本稿では前者の「世界で戦えるAI企業の創出」に焦点を当て、有力なスタートアップへの支援を通じて日本の価値創出を加速させる戦略を詳報する。
Googleと協調、最大3億円の投資と包括的AIインフラ支援
長谷川氏に続いて登壇したKDDI オープンイノベーション推進本部 副本部長の舘林俊平氏は、KDDIが2011年より15年にわたり推進してきたオープンイノベーション活動の実績に触れた。同社は有望スタートアップが選ぶ「イノベーティブ大企業ランキング」で9年連続1位を獲得しており、直近ではスタートアップエコシステム活性化に向けて300億円の投資も発表している。この取り組みをさらに後押しするものとして、Google AI Futures Fundとの協調による「AIスタートアップ支援プログラム」を発表した。
本プログラムでは、採択されたスタートアップ1社あたり最大200万ドル(約3億円)の協調投資が行われる。さらに、資金面だけでなく、GeminiやNano Banana、LyriaといったGoogle DeepMindの最先端AIモデルへの早期アクセス、KDDIの大阪堺データセンターが提供するソブリン型GeminiやGPUなどのAIインフラが提供される。加えて、KDDIの持つ約7,000万回線の個人顧客基盤と40万社の法人顧客基盤、そして両社の専門家による技術的・事業的サポートもセットで提供される包括的な支援体制となっている。
プログラムの運用方針について舘林氏は、特設サイトを通じた通年での応募受付と随時選考を行う仕組みであることを説明した。応募内容はKDDIとGoogleの両社で共有・審査され、採択された場合には基本として両社が同比率で株式を保有することを前提としている。また、採択規模はインドでの先行プログラムの事例を鑑み、年間5社程度を想定している。提供するアセットについても一律ではなく、スタートアップの要望に応じて最適に組み合わせ、出し分けていく方針であることが補足された。
