資金を出すだけでは不十分。戦略的リターンを生む「3つの問い」
「VCファンドに出資しても、なかなか戦略的なリターンが得られない」
「共同投資で損失を出したため、もはやVCファンドには投資しない」
これは、多くの事業会社が直面しやすい悩みであり、以前からよく耳にする言葉です。欧米の有力VCファンドが資金調達先として日本へのアプローチを強め、企業に対するイノベーション圧力が日増しに高まるなか、日本企業はスタートアップや最新テクノロジーへのアクセスを確保するため、VCファンドへの出資を増やしています。CVCをゼロから立ち上げるよりも、既存のファンドに資金を提供するほうが簡単に見えるからです。
しかし、戦略的リターンは「出資」という行為そのものから自動的に生まれるわけではありません。ファンドから得られるインサイト(洞察)やアクセスを、自社でどれだけ活かせるかによって決まるのです。
そこで、戦略的リターンを求める事業会社系の出資者(LP:リミテッド・パートナー)は、次の3つの問いに答えられなければなりません。
- 手に入れたインサイトを具体的な行動に活かせる体制が整っているか?
- 本気で向き合ってくれるファンドに出資しているか?
- 出資したいファンドが良いディールフロー(優良な投資案件)を持っているか?
特に最初の問いでつまずいている場合、後の2つの問いには進めません。以下では、それぞれの問いについて重要なポイントを解説していきます。
手に入れたインサイトを具体的な行動に活かせる体制が整っているか?
戦略的な意味で投資が報われるかどうかは、VCファンド側ではなく「事業会社側」にかかっています。社内DXに資するスタートアップの発掘であれ、M&A候補の特定であれ、日本での販売パートナーになることであれ、目的が何であってもまずは社内の受け入れ態勢を整える必要があります。すなわち、ファンドが提供するインサイトやスタートアップとのマッチングを、具体的な行動にどうつなげるかを定める組織的な仕組みとプロセスを整えなければなりません。
たとえば、スタートアップとの協業可能性を高めようと、海外VCから国内VCへの出資に切り換えた事業会社がありました。彼らは当初、協業が進まない原因を「言語や時差などの物理的な壁」だと考えていました。しかし、本質的な問題はそこにはありませんでした。実際には、社内にスタートアップとの戦略的適合性を評価できる人材がいなかったり、意思決定に時間がかかりすぎたりしたために、スタートアップ側が離れていってしまったのです。国内VCに変えても、この構造的課題が解決されない限り結果は同じです。トレンドや協業機会に対して組織立って動く術がなければ、それはただ資金を無駄にしているにすぎません。
こうした社内インフラは必要条件であり、整わない限りは前に進むことができません。既に準備が整っているようであれば、次の問いは「どのファンドを選ぶべきか」になります。
