本気で向き合ってくれるファンドに出資しているか?
VCから得られるインサイトやアクセスの質は、ファンド運用者(GP:ジェネラル・パートナー)が自社にどれだけの時間を割いてくれるかに大きく影響されます。そしてそれは、そのファンドに対して他にどのような投資家が参画しているか、あるいはGPにとって自社が「どれだけ重要な存在だと思ってもらえるか」によって決まります。
まずは出資者(LP)の構成から見ていきましょう。米国では、著名なVCファンドの資金の大半は事業会社ではなく、年金基金や大学基金といった機関投資家から拠出されています。彼らは純粋な財務リターンを志向し、2〜3年という短いスパンでの資金調達サイクルにも難なくコミットできます。一方、事業会社がこうした動きについていくのは困難です。機関投資家を中心とするファンドは財務リターンの最大化を目的とするため、戦略的リターンを追求する少数の事業会社に対して、手厚い協業支援などの非財務的なサポートを提供することは難しくなります。
一方、事業会社を中心とするファンドは戦略的リターンの創出に最適化する傾向があります。これは財務リターンの最大化と必ずしも相反するわけではありませんが、比重の置き方が異なるため、自社の目的に応じてファンドを厳選しなければなりません。一人のファンド運用者が、財務と戦略双方のリターンを最高水準で両立させることは容易ではないのが現実です。
次に、LPとしての「存在感」の問題があります。戦略的リターンは、GPの深い知見(あるスタートアップのどこが唯一無二なのか、市場がどう進化するのかなど)へのアクセスから生まれます。GPの関心度は、ファンド総額に対する自社の出資割合にある程度左右されるのではないかと感じています。確立された有名ファンドは今や数十億ドル規模に達し、最低出資額も1,000万~2,000万ドルの範囲で始まることが一般的です。このような大規模ファンドが抱える膨大なLPの数を考えれば、小口出資で自社向けのオーダーメイドな支援を期待するのは無理があります。
対照的に、特定の領域に特化したブティック系ファンドや新進気鋭の運用者(エマージング・マネージャー)は、比較的小規模なファンドを運営しており最低出資額も低く設定されています。そうしたファンドでは日本企業の投資がはるかに大きな重みを持ち、GP側にも投資家の目標を本気で支援する明確なインセンティブが生まれます(ただし、エマージング・マネージャーへの投資にあたっては、その分リスクが高めである点など、特有の留意事項も事前によく考慮する必要があります)。
ただし、ここで二つの注意点があります。第一に、複数ファンドにまたがり連続してGPを支え続けなければ、LPとしての存在感は薄れ、得られるサポートの質も落ちていきます。第二に、大口出資を申し出たとしても、それによって得られるのは「出資候補として検討される」だけであり、ファンドへの参画が確約されるわけではありません。最も人気のあるGPは常に募集枠以上の資金が集まる状態(オーバーサブスクライブ)にあるため、たとえ出資額が大きくてもLPを厳選します。彼らは「LPが投資先企業の成長に貢献できるか」「一緒に仕事がしやすい相手か」を見極めているのです。
