マネーの源泉は「貢献の記録」
最近話題になった本に、フェリックス・マーティンの『21世紀の貨幣論』がある。貨幣の歴史を述べた本だが、貨幣の原初段階を示すものとしてヤップ島のフェイ(巨石)の例が挙げられている。フェイについては、シュンペーターなどもマネーの本質として紹介しているため、最近の発見というわけではない。フェイは、全く動かすことのできない巨石だが、それが誰に所属しているものか、ヤップ島の島民は共通認識(コンセンサス)を持っているという。取引の債権と債務は一定期間ごとに相殺され、相殺できない余りがあれば、フェイの所有権が移るのだ。
もう一つ同書が挙げている例が、英国で使われていたタリーと呼ばれる木片である。これは、誰かが誰かに物を売ったり、サービスを提供した際の対価を、木片に付ける溝で表現したり、その後木片を二つに割って、貸方と借方で分けて持っておくというのだ。ちなみにこの時、貸した方の木片を「ストック」と呼び、これが株券などをストックと呼ぶ語源となっている。この時割られた木片は、債務が清算された時に再び合わせて照合し、正しい量が返済されたかを確認する。そして、のちには未清算の木片が通貨として流通したという。