企画からプロトタイピング、プロダクト開発まで、一貫してアジャイルの思想、手法を取り入れる
ここまでで紹介されたのは成功事例だが、最後に「反省点の残る事例」も紹介された。ある会社で営業マンが使うiPad向けツールの開発プロジェクトで、クライアント側の窓口を情報システム部門が担い、ユーザーである営業部門とは直接のコミュニケーションを取ることができなかったのだという。
間に別の部門を介して実際のユーザーのニーズを確認するには、情報伝達のためのドキュメントを作成したり、ドキュメントを読み取るための時間が必要となったりする。また、UIプロトタイプ段階での修正が増えて開発に集中できず、納期間際の稼働が切迫することになった。結果としてプロダクトは完成したが、課題の残るものになったという。
工藤氏はこの経験を振り返り、「どこかの部署が挟まることで意思伝達がうまくいっていないプロジェクトは、世の中にたくさんあるのではないか。顧客が実在するなら、直接コミュニケーションをとって改善を重ねていくのが一番良い」と述べた。
これら事例から教訓を引き出し、工藤氏は「これからのプロトタイピング」について語った。
従来の開発手法では、UXプランナー、UIデザイナー、エンジニアの間で作業が分断されていたところに課題がある。プロトタイプを作るにしても、これまでは紙上でUIデザインを確認するペーパープロトタイプと、エンジニアによるアジャイル開発(小さな機能毎に開発と評価、改善を繰り返していく開発手法)が別々に存在していた。これからのプロトタイピングは、UXプランナー、UIデザイナーとエンジニアが三位一体となってまわしていくべきだというのが工藤氏の主張だ。
そのために、3者がそれぞれ以下の役割を果たすことが求められる。
UXプランナー
- 論拠のあるプランニング
- 実現性の高いサービス設計
UIデザイナー
- 論拠に基づくUIデザイン
- インタラクティブな動きを意識したUIデザイン
アプリケーションエンジニア
- プロジェクトの早期プロセスからの参加
- 非ウォーターフォールの意識
工藤氏はIDEOのパートナーであるディエゴ・ロドリゲス氏のブログに書かれている言葉「プロトタイピングはプロセスの中のステップではなく、それ自体がプロセスである」を引き合いに出し、次のように締めくくった。
旧来の日本の開発は、ウォーターフォール、あるいは社内のしがらみに縛られすぎていて、作業がセクショナリズム的に分断されていることに非常に危機感をいだきます。それらをミックスし、すべてにおいてアジャイル、すべてにおいてプロトタイピングということを提唱していきたいと考えています。
スピーカー: 株式会社ゆめみ 取締役 工藤元気
製造メーカー、小売業における、スマートデバイスを活用した、アプリ・Webサービスに関するソリューション事業を統括。
受託事業を専門としながら、旧来のウォーターフォール型とは異なるアプローチでの提案を追求し、2016年9月に製造メーカー向けの新サービスとして「Agile.O.I」をリリース。
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