「化粧品の枠を越えて新たな事業市場を開発する」という、壮大な新規事業プロジェクトを任されて
寺田(i.lab Business Designer):
前回は、革新を生み出す研究者として個人的なノウハウや姿勢等を伺いました。今回は、私たちも支援させていただいているプロジェクトとその進行について触れられたらと思います。
現在3期目で私と村越が参加していますが、テーマが「化粧品の枠を越えた新たな事業市場を開発する」という壮大なもので、ここまで何の縛りもないプロジェクトを任されているというのはかなり稀なことだと思います。どのような経緯でプロジェクトが立ち上がったのでしょうか。
本川(ポーラ横浜研究所 肌科学研究部 上級主任研究員):
このプロジェクトについては完全にトップダウンによるものです。新市場をつくるような研究、それも化粧品以外でも何でもいいというのは、まったく初めての取り組みです。明確なゴールが設定されて、そのための手段を見つけるというのが基本的な研究開発の行い方ですからね。今回の「ゴールからつくれ」には、最初は誰もが戸惑い、途方に暮れました。
村越(i.lab Product Designer / Jun Murakoshi Design 代表):
何をすればいいかわからない状態から、どうやってプロジェクトをスタートされたのですか。
本川:
まずはひたすら妄想しました。自分たちが研究しているもの、それ以外で思いつくものも含めた様々な観点から妄想し、そこからイメージできる事業について500くらいの案を出し合いました。その中から1つだけ「社会的価値が高く、かつ実現できるかも?」というものに絞って、基礎研究から始めています。現在は、基礎研究、製品化と事業化という3つのタスクを一緒になってぐるぐる回しているというところですね。当社としても、基礎研究と製品開発、製品開発と事業開発というセットのタスクはけっこうあるのですが、3つを同時に回すというのは滅多にないんです。正直、リスクも伴いますが、「早く市場に出したい」という一念でそうしたアプローチを用いています。
村越:
ソフトウェアでいうところのアジャイル開発が、物体を伴う製品で行われているというのはすごいことですよね。ちなみにi.labが合流した時期は、既に1つのテーマに絞られていて方向性が固まっていた頃でした。そこまでにはどのくらいかかったのですか。
本川:
1年くらいでしょうか。現在進行中のプロジェクトの全貌はまだ明らかにはできないのですが、その時に思い描いたゴールイメージは「ある文化をつくること」でした。それが現在の社会課題を解決できる仕組みとなり、私たちが持っている技術で実現できるのではないかと妄想したのです。
村越:
当時、お話を伺ってi.lab内でも「この方向性は筋がいい!ぜひ実現したい!」と興奮したことを覚えています。ぜひともお手伝いさせていただきたいと思いました。
本川:
まだ公表はできないのですが、ポーラグループの新しい「グループ理念」である「感受性のスイッチを全開にする」を体現し、老若男女に対して新しい価値を提供できるもの、と申し上げておきましょうか。もう少しお待ちいただければ、お話しできる段階になると思います。ぜひ、数ヶ月後のメディア発表を楽しみにしていただきたいですね。そこからはいっそうドライブを掛けて一気に世の中に広げていきたいと思っています。