メルカリの福利厚生制度は「心理的安全」の観点でダウンサイドをケアする
藤本(一般社団法人at Will Work 代表理事 / お金のデザイン シニア・コミュニケーションズマネージャー):
メルカリさんは、リモートワークはしないと決めているということでしたが(第3回の記事参照)、色々な制約がある社員さんがいたときには、どういうふうに解決されているんですか?
小泉(株式会社メルカリ 社長 兼 COO):
最終的にはリモートも認めていくことになると思いますが、幸い今はそこまでしなければいけない人がいないんです。それはありがたいことだと思いつつ、今のうちに介護休暇の100%給与保証の制度を作ったりしています。育児に関しても、女性は産前の10週と産後の約6ヶ月、男性は産後8週間、給与を100パーセント保証しているんです。だから男性社員も90%以上が育休を取っているんですよ。僕もこれから子どもが生まれるので取る予定です。あと、子どもを認可外の保育園に入れたら認可保育園との差額を払います。そうすると、5月ぐらいに出産しても、10月頃には復帰してくれるんですよね。会社の負担で早く保育園に入れられて、保活にも有利になったりするので。
社員それぞれに色々な事情があると思うので、会社としては、何かあっても働きやすいような仕組みをたくさん用意しておこうという考え方です*1。
日比谷(一般社団法人at Will Work 理事 / Sansan株式会社 コネクタ、Eightエバンジェリスト / Sansan 名刺総研 所長 / 株式会社PR Table 社外取締役):
そういう制度は、社員の声から生まれたんですか?
小泉:
初期に作ったものは、僕の発案です。メルカリには「Go Bold」というバリューがありますが、親の介護だとか子育てだとか、心の中に不安を抱えた状態だと、仕事で大胆なチャレンジはできないですよね。
社員それぞれに色々な事情があると思うので、会社としては、何かあっても働きやすいような仕組みをたくさん用意しておこうという考え方です*1。
日本の会社の福利厚生って、住宅補助のようなアップサイドではたくさんくれるけれど、ダウンサイドはケアしてくれないのが問題だと思うんです。うちは逆で、アップサイドは給料とかストックオプションで支払います。その代わり、ダウンサイドは全部会社が面倒を見ようと。だから全社員が死亡保険に入っているし、妊活の支援もする。この会社で働いている限りにおいては、働いていく上での不安を全部ヘッジするから、頑張って働いてアップサイドを取りにいこう、そういう考え方です。
藤本:
社員も会社もWin-Winということですね。確かに、いろいろな制度があるけれど中途半端、という会社さんは多いです。例えばリモートワークは3日前に申請してね、みたいな。緊急の事情があるからリモートでやりたいのに、3日前では分かりませんよね(笑)。でも、メルカリさんの場合、何かあったらちゃんと休んで対応すればいいじゃない、仕事はその後戻ってきてやればいいよね、ということですね。リモートワークじゃないと解決できないという思い込みにとらわれている会社も多いのかもしれないですね。
*1:メルカリの人事制度「merci box」