組織はカオスに始まりサイエンスとナラティブを往来する──経営における「美意識」とは

鼎談ゲスト:コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社シニアクライアントパートナー 山口 周氏 vol.1

 本シリーズでは、2007年の創業時から新しい経営方法を追求してきたダイヤモンドメディア株式会社の武井浩三代表取締役と、イノベーティブで協働的な組織のあり方とその実践について研究を行う宇田川元一氏(埼玉大学 准教授)が、これからの組織とそこに近づく方法について様々な方と語り合う。今回は著書、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』が話題の山口周氏を迎え、経営や社会における美意識の意味から未来の組織のあり方まで、幅広い議論が展開された。全4回のシリーズでお届けする。

[公開日]

[語り手] 山口 周 宇田川 元一 武井 浩三 [取材・構成] やつづかえり [写] 長谷川 梓 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] ワークスタイル 事業開発 組織変革 組織開発 ホラクラシ― ナラティブ・アプローチ 美意識 エビデンス・ベースド

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ビジネスパーソンの“正解を出す技術”がコモディティ化した時代に必要となる「美意識」とは

宇田川(埼玉大学 人文社会科学研究科 准教授)
 はじめまして。僕は山口さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』 (光文社新書)を、アメリカの学会発表後の飛行機で読みました。疲れていたから途中で寝てしまうかと思ったのですが、眠くなるどころかどんどん目が冴えてきて……。あまりに共感して、山口さんを“血を分けた兄弟”なんじゃないかと思ったくらいです(笑)。

武井(ダイヤモンドメディア株式会社 代表取締役 共同創業者)
 僕も、すごく面白く読ませてもらいました。

山口(コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社シニアクライアントパートナー)
 ありがとうございます。

宇田川
 “美意識”という言葉は、あまりビジネスの中で語られることがなかったと思いますが、あえてそれを前面に出されたのは、なぜでしょうか?

山口
 なぜ“美意識”という言葉が出てきたのか、自分でもよく分からないんです。ただ、そこにたどり着くいくつかの水脈みたいなものがあって、ひとつは株式会社ポーラ・オルビスホールディングスの会長である鈴木郷史さんとの出会いです。僕が以前に書いた本を気に入ってくださって、ちょくちょくお話をしていたんですが、彼はもう10年くらい前から「美意識がないビジネスマンはダメだ」と言っていました。鈴木さんは「“事件”を起こせるやつ」という言い方をしますが、単に優秀な人ではなく美意識のある人が必要だと。それで3〜4年前、ポーラで美意識を鍛えるワークショップをやってくれと頼まれました。何をしたら良いのか、最初は非常に困りました。でも、その時に色々調べてみて、なんとなくタネのようなものに出会ったというか、「確かにこれは大事かもしれない」と思うようになったんです。

 もうひとつ、私の本業は組織開発や人材育成のコンサルタントで、欧米の取り組みをよくウォッチしているんです。すると、『ウォール・ストリート・ジャーナル』に、アメリカではMBAに行く人が減ってきていて、むしろRCA(Royal College of Art:英ロンドンの国立美術大学)のようなところに人を送り込む会社が増えてきている、という記事がありました。

 その後も似たような話が次々に出てきたのですが、にわかにはよく分からず、すぐに日本で取り入れられる気もしませんでした。ただ、分からないということは、そこに何か新しい気づきがあるのが常です。「なんでそんなことをやっているんだろう?」と、RCAに電話したり、送り込む側の企業の人事に聞いたりしました。すると彼らは、「正解を出す技術は、もうみんな持っている。それでは戦えないと分かっているから」と言うんです。

 色々な流れが、そこでひとつの像を結んだという、そんな感じですね。だから、最初に“美意識”という言葉で表現したのは、︎鈴木さんということになるのかな。

山口 周山口 周 氏(コーン・フェリー・ヘイグループ シニア・クライアント・パートナー)
1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『天職は寝て待て』など。神奈川県葉山町に在住。

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