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トラリーマンに学ぶ「働き方」

600人のマネジメントサイズからひとりチームへ──「痛みを伴う転換点」を好機にする仲間探しの旅とは?

第3回対談ゲスト 野村総合研究所 未来創発センター 2030年研究室室長 齊藤義明氏:前編

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「社名より使命」という精神が生まれた経緯──齊藤さんが最も共感したトラの条件とは?

仲山進也氏(以下、敬称略):「組織に所属しながら、自由な精神で革新的なチャレンジに挑むトラリーマンの実例を連載で紹介しましょう」と決まった時に、真っ先に浮かんだのが前回公開の琉球銀行伊禮さんと野村総合研究所齊藤さんです。

齊藤義明氏(以下、敬称略):伊禮さんと比べたら、僕なんておとなしい方ですよ。

仲山:「日本中の突き抜けた革新者100人にインタビューした人」は、おとなしくないと思います(笑)。まずは読者の方のために「トラリーマンって何?」というのを共有したいと思います。

トラリーマンの名付け親である藤野英人さんと仮説として立てた「トラリーマンの共通条件」がこれです。

トラリーマンの条件

齊藤:全部、納得できます。おこがましくて「自分もそうです」とは言えませんけれど……。ただ、この中で一番共感するのは「レールから外れた経験と痛みを伴う転換点」です。他の要素はこの負の原体験から全てスタートしているように思います。レールから外れた経験と痛みによって、それまでの自分の価値観が崩れ、もがき、自分を再構築する覚悟が決まる。その結果として「社命より使命」のような考え方に辿り着くのではないでしょうか。

仲山:そのあたりの経緯も視野に入れつつ、齊藤さんは今どんな働き方をしているか、教えてもらってもいいですか。

600人近いマネジメントサイズから“ひとりチーム”へ──今までの仕事の方法論を否定して辿り着く“仲間探しの旅”

齊藤:僕は88年に野村総合研究所に入社して、若い頃は地域計画や産業政策等のプロジェクトで鍛えられて、その後民間企業の新事業戦略のプロジェクトに数多く関わりました。比較的若い年齢で海外拠点の支店長や、コンサルティング本部の中枢である企画室長を経験させてもらいました。しかしその後、現場の部長に戻り、さらにその部長も降格になって、もう一度一兵卒から出直すという原体験があります。

仲山:まさにレールから外れた経験ですね……。

齊藤:はい、かなり激しい脱線ですよね(笑)。企画室長だったときは、本部全体で600人以上のコンサルタントをマネジメントする充実感と責任感とが自分のモチベーションでした。しかしその後、リーマンショックがあり、再度現場に戻り、降格も経験したんです。屈辱感もありました。だから僕は、別にカッコよくトラリーマンの道を選んだわけではありません。それしか自分を再生する道、奮い立たせる道がなかったからです。

仲山:レールから外れた後はどんなことを?

齊藤:新規クライアントを一から開拓しました。そのプロジェクトには、自分一人だけで乗り込みました。部下がいませんから。その代わり、クライアント側がメンバーを15人ほど準備してくれました。しかも各事業部の若手・中堅の精鋭の皆さんでした。皆で合宿しながら一緒に議論しました。自分が苦しかった時だった分、いろいろな気持ちの入ったプロジェクトになりました。この時のメンバーの皆さんとは今でもよくお酒を呑みます。顧客から親友に変わりました。

仲山:顧客から親友。トラリーマンに共通する「お客さんのなかに熱狂的なファンがいる」というやつですね。

齊藤:第1号のクライアントになって下さった会社には今も感謝しています。このときの経験が、今の自分の仕事のやり方に色濃く影響を与えていると思っています。組織はなくても、ネットワークがあれば、物事は動かせるという考え方です。

当時、中年になってからもう一度前線で顧客とまみれる経験について、これはこれで面白いし、やりがいがあると感じていました。しかし1年後、新しい組織に異動になりました。

齊藤義明齊藤 義明氏(株式会社野村総合研究所 NRI未来創発センター2030年研究室 室長)
1988年北海道大学卒、野村総合研究所入社。NRIアメリカ ワシントン支店長、コンサルティング事業本部戦略企画部長などを経て、現在、NRI未来創発センター2030年研究室室長として、「100人の革新者プロジェクト」を推進し、地域イノベーションに挑戦している。専門は、イノベーション支援、モチベーション開発など。近著に、「日本の革新者たち」(BNN新社)がある。

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