顧客は「企業の大義」や「事業への本気度」を感じ取る──マーケターは自社の課題を認識しているか?
荻野英希氏(FICC代表取締役・以下、敬称略):これまで150以上の商品開発を行ってきたBlabo!は、その数だけ生活者のインサイトを発見してきました。一方で、うまくいかなかったケースもありますか?
坂田直樹氏(Blabo代表取締役CEO・以下、敬称略):たくさんありますよ。傾向として同じような課題だとしても、企業の熱意が感じられず、本当に企画を実現したいという気持ちが弱いと、ユーザーからの反応に深みがなく、意見の量も少ないですね。企業は「なぜそれを行うのか?」という原点に向き合い、課題を理解していることが必要です。
荻野:企業が課題をつかめていないと坂田さんたちも動けないし、Blabo!ユーザーに対しても明確なブリーフィングができない。結果、企画が失敗してしまう。
Blabo!が商品という「物」を扱うのに対し、私の仕事はブランドやその「意味」の設計を専門としています。ブランドは、機能と情緒・ベネフィットで構成され、さらにその上に、大義のような社会に貢献できる企業の目的が存在している。ユーザーは商品を通して、「企業が自分たちにとって何を解決してくれるのか、真剣であるか?」も感じ取っているんですね。
坂田:Blabo!は企業と生活者が直接対話をして、結ばれるプラットフォームです。いわば僕らは、ファシリテーターにすぎません。インサイトを発見するため、明確に自分たちの課題を捉えブリーフィングを行うスキルは、企業のマーケターにとても必要です。
坂田 直樹氏(株式会社Blabo 代表取締役 CEO)
ユニリーバ・ジャパンのマーケティング部門にてブランド戦略立案、新商品開発に従事。 2011年に株式会社Blaboを創業。生活者インサイトを発見する日本最大の共創プラットフォームBlabo!を運営。 Blabo!では2万3千人を超える生活者がプランナーとして活躍しており、コカ・コーラやキリンビール、森永乳業、ハウス食品、ローソンなどのメーカーや小売りが延べ200社以上採用している。2015年度グッドデザイン賞など受賞歴多数。「クローズアップ現代」(NHK)、「ニュースJAPAN」(フジテレビ)などメディア出演も多い。東洋経済オンラインでの連載『ズレない思考で、ヒットを作れ』や著書に『問題解決ドリル―――世界一シンプルな思考トレーニング』(ダイヤモンド社)などがある