事業内容や規模で異なるOKRの期間──常識的な範囲で収めないObjective設定とは?
堀江:一般に、OKRは3ヶ月ごとに見直すものと言われています。一方、上場企業にはIRで発信している中長期の計画があります。日本の大手企業がOKRを考えるとき、OKRを中長期計画と紐づけて設定してもいいのでしょうか。
及川:中長期の期間や精度によりますよね。それが指す期間・精度は、事業や企業、業界によって異なります。あまりにも長い期間を指した場合、絵に描いた餅で終わってしまう可能性があるので、OKRに紐づけることには懐疑的です。どのくらいを中長期と想定されているのでしょうか。
堀江:今回は2~3年の期間を想定していました。実際、YouTubeのように2~3年スパンのOKRを設定していたという例もあります。OKRと長期計画をイコールとした設定も可能なのでしょうか。
及川:もちろんそのように設定しても構いません。YouTubeでは2~3年先まで見通すことができ、そこまでのマイルストーンを設定したかったという事情を踏まえてOKRを設定していました。
OKRは最短だと3ヶ月ごとに設定しますが、もちろん3ヶ月では終わらないプロジェクトもありますよね。そうすると、3ヶ月スパンのOKRだけを設定するのは難しいのです。3ヶ月のOKRを設定するために、その上位のOKRをどのくらいの期間で考える必要があるのかを意識した方がいいですね。たとえば、スタートアップが3年後まで見通したOKRを設定するのは難しいですよね。
事業内容や会社規模によって、どれくらい先まで見通した上で直近の3ヶ月を考えるのかが決まります。その「どのくらい先」が中長期計画にあてはまると考えていいと思います。
堀江:ありがとうございます。すでにOKRを導入している企業の中にも、OKRの期間について頭を悩ませているところがあります。例えば3カ月でOKRを設定しても、見直すたびに戦略が変更されているように見え、メンバーが疲れてしまうといったものです。この場合はどのようにOKRを組み立てていけばいいのでしょうか。
及川:Oがころころと変わってしまう場合、Oの設定を間違えている可能性があります。明確な目標がまだ定まっていない企業ほどOの設定は難しいですよね。
堀江:状況が変わりやすいスタートアップや新規事業だと、時に頻繁なピボットも必要になるが故ですね。
及川:はい。ただ、その場合のOは「やりたいことを決める」とすべきなのです。
堀江:Objectiveを「やりたいことを決める」にしてもいいんですか?
及川:そうです。そうすると、短期的に路線変更を繰り返すことも受け入れられますよね。
堀江:なるほど。ビジネスが成立する市場と方法を探す、というものに近いですね。
及川:他にも、立ち上がりたてのスタートアップが「半年後に潰れない」というOの設定をすることができます。この場合でも「潰れない」ためにすることはOKRの考えとしては正しいのです。Oを頻繁に変更してしまうという悩みの裏には、Oを常識的な範囲で収めてしまっているかもしれません。
堀江:この発想は面白いですね。OKRでは今世の中に無いような、野心的な価値の創出を促すものにしたほうがよいと考えていたので、このお話で少し楽になる人もいるかもしれません。