社長の主な仕事は後継者育成。事業部人事が強すぎる弊害とは
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏(以下、敬称略):有沢さんは、さまざまな業界の若手を集めた勉強会「有沢塾」を開いており、後進の育成にも力を入れられていますね。そんな有沢さんから見て、現在の日本企業の人事の実情から、どのような課題を感じられますか?
カゴメ株式会社 有沢正人氏(以下、敬称略):職能資格制度と年功序列に偏重した評価体系については言わずもがなですが、これに加えて大きいのは、事業部人事のあまりに硬直した感覚ですね。どの会社も、事業部から優秀な人を出さずに、事業部で抱え込む傾向が強すぎます。
そうすると何が起こるかと言えば、経営人材が育たないんです。経営人材とは、さまざまな事業パターンを知っている人間です。いろんな部署でいろんな経験を積まなければ「こういう事業もやって、その間この事業の準備をして」と、経営の鳥瞰図を描けるような人材にはなり得ません。それなのに、短期的な部門利益ばかり優先させて、優秀な人材を飼い殺している現場などには、ものすごく文句を言ってやりたくなりますよ。
荒金:全社的な目線で事業と人事を捉えられていないと、経営を司る後継が育たなくなってしまいますね。
有沢:僕はプロ野球が好きで阪神のファンなんですけど、あそこは人材育成がまったくダメな球団なんですよ(笑)。後継者の指名はするんだけど、指名しただけで終わりなっているパターンが多い。指名したら、どういうビジョンでどういうキャリアパスを歩ませていくか、ちゃんと育成プロセスを描くことがセットである必要です。
これは会社でも同じです。社長の仕事の100%は、自分の後継者を育てること。役員は50%、部長は30%くらいですね。それくらい、事業にとって後継者の育成は重要な要素です。
僕は人事の人間として、会社のガバナンスにもガンガン口を出します。将来のカゴメをどうしていきたいのか、その絵を描くところから、人事の介入は不可欠です。なぜなら、人事が最もイノベーティブでエッジが効いていないと、全社戦略がついてこなくなりますから。