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人事と経営のジレンマ

守るべきもののためイノベーティブかを常に問う──リーダーとマネジャーの違いを知り「他者と働く」には?

ゲスト:カゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)常務執行役員 有沢正人氏【後編】

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 連載「人事と経営のジレンマ」第4回では、カゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)常務執行役員の有沢正人さんにお話をお聞きしました。  前・中・後の三編でお届けする記事の前・中編では、有沢さんが組織開発の現場で手がけてきた事例を通して、「経営のための人事の在り方」について議論を深めていきました。記事の締めとなる後編では、カゴメが抱えている経営的な課題にも触れながら、「他社、他者と知ることの重要性」や「守るために変わるべきこと」について語り合いました。

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リーダーシップとマネジメントの違い。ブランドを守ることも人事の役割

埼玉大学経済経営系大学院 准教授 宇田川元一氏(以下、敬称略):私はドラッカーの『産業人の未来』が好きなんです。今では『マネジメント』のほうが有名になってしまいましたが、思想的には前者のほうが大事だと思っていて。

カゴメ株式会社 有沢正人氏(以下、敬称略):僕もドラッカーは大好きです。彼は「Getting the right things done(正しい仕事を成し遂げる)」と「Doing the right things(正しいことを正しく行う)」の違いについて語っていますよね。「Getting the right things done」とは、効率を上げるために物事を正しく行なうオペレーションであり、それはマネジャーの役割であると。「Doing the right things」とは、正しいことが何かを見極め、それを実行していくことであり、リーダーに期待される役割だとしていますよね。これから社員一人ひとりがやるべきは「Do the right things」であり、その限りにおいて、絶対に間違いはないよ……ということは社員にも伝えています。

宇田川:ドラッカーの思想は、政治思想的には保守主義思想です。誤解されがちですが、保守主義は別に右翼的な思想ではなくて、むしろ改革の思想であり、ドラッカーの言葉を借りれば「現実から始めよ」ということなんですよね。

 何のために我々は改革をするのか――これについてドラッカーは「守るべきものを守るために、変えるべきものを大胆に変える」という言い方をしています。有沢さんはこれまでにカゴメの改革に携わられてきたわけですが、その中で「カゴメという会社が守るべきもの」は、何だと捉えられていますか?

有沢:まず、カゴメで守るべきものは「カゴメというブランド」だと僕は思います。小さい会社ながら、ブランドの信用力は全産業の中でもかなり上位につけています。

宇田川:他業種からもかなり尊敬されていますね。

有沢:ブランドに売上がついていっていないと社長は文句を言っていますけどね(笑)。それはしょうがない、ケチャップを1日に5本も使う人はいませんから。

 カゴメが有する最大の資産は、エンドユーザーのブランドイメージです。安心、安全、健康などのキーワードで、カゴメの商品を選んでいただける。消費財のメーカーであれば、そこが一番大事ですから。

 人事としては、従業員のハッピーを最大化することと共に、エンドユーザーにブランドとしてメッセージを伝えることも考える必要がある。「それは人事に関係がない」と言った瞬間、会社は終わります。なぜなら、ブランドイメージを守るのは一人ひとりの社員であり、その社員に対する責任を持っているのは、人事と経営だからです。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 荒金泰史氏(以下、敬称略):ブランドイメージを守り、さらには向上させていくために、どういう人を採用して育て、どういう施策を行ない、どういう戦略で社会へ訴えていくかを考えること。これはまさに経営戦略のための人事戦略ですね。

タイトルカゴメ株式会社CHO(最高人事責任者)常務執行役員 有沢 正人氏
慶應義塾大学商学部卒業後、1984年に協和銀行(現りそな銀行)に入行。銀行派遣にて米国でMBAを取得後、主に人事、経営企画に携わる。2004年に日系精密機器メーカーであるHOYAに入社。人事担当ディレクターとして全世界のグループ人事を統括、全世界共通の職務等級制度や評価制度の導入を行う。2009年に外資系保険会社であるAIU保険に人事担当執行役員として入社。ニューヨーク本社とともに、日本独自のジョブグレーディング制度や評価制度を構築する。2012年1月、カゴメ株式会社に特別顧問として入社。カゴメの人事面におけるグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。2012年10月執行役員人事部長、2017年10月執行役員CHO就任。2018年4月、常務執行役員CHOに就任。

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