それぞれの正しさから対立する者同士を「マネジメント」する
宇田川元一氏(埼玉大学経済経営系大学院 准教授、以下敬称略):今、藤倉さんはCTOという役割で日常的に「対話」を行なっているということでしたが、どうやってその力を磨かれてきたのでしょうか。
藤倉成太氏(Sansan株式会社 執行役員 CTO、以下敬称略):対話ということを意識するようになったのは、Sansanに入社して何年か経ち、マネジメントの仕事をするようになってからのことですね。
宇田川:Sansanに入られたのはいつ頃ですか?
藤倉:2009年1月入社なので、この年末で丸11年になります。
宇田川:だいぶ古株ですね!
藤倉:そうなんですよ。社員番号18番で、たしか6番目のエンジニアでした。最初はいちエンジニアとして働いて、入社3〜4年目のときに当時の開発部長が別の部署の立ち上げをすることになったので、僕が開発部長を引き継ぐことになったんです。それが明確なターニングポイントでしたね。
マネージャー的な職種は初めてだったので、ちゃんとスキルを磨きたいと思いました。でも、マネジメントを体系立てて学べるものが見当たらなくて。ソフトウェア・エンジニアリングの場合、沢山の技術書や専門書があって、月に何冊でも読めるんです。でもマネジメントに関しては、ビジネス書などにパーツパーツの方法論は書かれていても体系的なものがないと感じました。だから、自分なりに「マネジメントとは何か」を定義していかなければいけないと考えました。
宇田川:最初は手探りだったわけですね。その過程で、どんな問題にぶつかりましたか?
藤倉:よくあるのは、個々人の意見の衝突ですよね。幸いにしてSansanのメンバーはいい人が多いので、そんなにひどいことにはなりませんが、それでも相手を打ち負かそうとするような瞬間というのはあるわけです。例えば、システムの基盤を作るインフラストラクチャーの担当とその上で動くものを作るソフトウェアエンジニアは、それぞれ守るべきものが違うことから対立が起きがちです。営業とエンジニアという職種間、経営とエンジニアという上下の間のコンフリクトもあります。
解決しようとしてもうまくいかなかったり、ときには傷ついたりしながらもなんとかできたり──それを繰り返す過程で自分の中で整理し、体系立て、言語化し、もう一度同じ問題が起きたときにはすぐに解決できるように、再現性のあるメソドロジーにすることを意識してきました。