インタビュー 宇田川先生初の著書『他者と働く』対談

組織の溝に橋を架けるために“相手が使う言葉”に着目する──Sansan藤倉氏と宇田川准教授が語る

ゲスト:Sansan株式会社 執行役員CTO(Chief Technology Officer) 藤倉 成太氏【前編】

 組織論・経営戦略論研究者の埼玉大学大学院宇田川元一准教授の初の著書『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)は、組織で起きている複雑で厄介な問題を解く鍵としてナラティヴ・アプローチという考え方に基づく「対話」を促す本だ。本連載では、同書をベースに組織における様々なビジネスパーソンと対話について議論していく。
 今回は2009年にSansanに入社し、2018年にCTOに就任した藤倉成太氏をゲストに迎えた。宇田川氏の著書を読み、大いに共感したという藤倉氏は、一見、技術的な問題に向き合うことが多いように思えるエンジニアの世界でも対話が重要である理由を明快に語った。その内容を、前・後編でお伝えする。

[公開日]

[語り手] 藤倉 成太 宇田川 元一 [取材・構成] やつづかえり [写] 和久田 知博 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 企業戦略 技術的問題 適応課題 ナラティヴ・アプローチ 依存症

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退職ブログにある、組織と書き手側の双方が持つ正しさ

藤倉成太氏(Sansan株式会社 執行役員 CTO、以下敬称略):宇田川先生の本を読んで、どこか一部分にというよりも、この本が持つ全体的な意義のようなものに共感しました。僕も日頃から、組織で起きる多くの問題の根本にはこの本に書かれているような課題があるものだと感じていて。そのことを明確に定義付けてくれたということが、この本の大きな価値だと思います。

宇田川元一氏(埼玉大学経済経営系大学院 准教授、以下敬称略):ありがとうございます。

藤倉:僕らはソフトウェア・エンジニアリングの世界で生きていますが、この世界ですら、技術的なことで択一的に解決できる課題はほぼないんです。あったとしたら、それは新卒の子でも解決できるような問題で、多くは個々人の立場や組織的背景、価値観などによって意見はズレ、対立が起きます。一概に、どれが正しいとは言えないんです。

宇田川:先日、平田オリザさんと対談をしたときに「退職ブログ」のことが話題にのぼりました。会社を辞めたことをブログで報告する「退職ブログ」の書き手には、エンジニアの方が結構いらっしゃいますよね。読んでみると、「自分はこういう技術を持っていて、こういう能力があるのに、それを活かさない組織はおかしい」と怒っている人が結構いて。もちろん、そういう組織にも問題はあるのだけれど、その中で自分が活きるように取り組む余地があることにも、気づいてもらいたいと思うんです。

藤倉:そうですね。

宇田川:ソフトウェアの世界というのはロジックが明確に立ちやすいから、余計に対立が先鋭化しますよね。「こういう理屈で、こうやったら、こうなる」と説明できるから、「自分は正しい」という主張になりやすい。そのときにもう少し対話的な観点を持ってもらうと、自分の考えやスキルをもっと活かせるんじゃないかな、と思うのですが。

藤倉:はい。「退職ブログ」に書かれるような組織と人の間の問題でもそうですし、エンジニア同士でも、意見が一致しない相手が「なぜ、そういうふうに考えるのか」という背景の部分がお互いに理解できれば、落とし所は見つかるものだと思います。

藤倉成太Sansan株式会社 執行役員CTO(Chief Technology Officer) 藤倉 成太氏

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