「勝手に売れていく」状態を目指したらこそ商機を逃す──ベルフェイス「売る」の変遷
小林泰己氏(ベルフェイス株式会社、以下敬称略):今回のテーマ「売る」について、議論の前提となるようまずは弊社の話をさせていただきます。 Web会議システム「bellFace」を提供しているベルフェイスは、サブスクリプション方式のSaaSで、今のところシングルプロダクトです。私が所属している部署は、お客様と1対1となるコンサル型のカスタマーサクセスは行っておらず、Webコンテンツの提供やイベント・コミュニティ運営など、複数のお客様と同時に相対する方法で顧客支援を行っています。
「売る」という話では、セールス部門は新規獲得だけを目指し、カスタマーサクセス部門はアップグレードとして顧客単価の向上につながるように働きかけたり、場合によってはダウングレードを勧めて解約を阻止したりという部分を担当しています。カスタマーサクセスでは積極的に売り込んでいくよりも、「勝手に売れていく」状態にすることを重視しています。そのため、ヘルススコアなどを活用し、アラートを見て「アップグレードがいけそうだ」とわかれば動くといった形で施策を実行しています。
2019年9月までは、そういった考えでアップグレードの販売活動をカスタマーサクセスが行っていましたが、10月からは更に、アップグレード専門の役割を担うメンバーをチームの中に置きました。「勝手に売れていく」状態を目指したからこそ、本来ならアップグレードしていただけたお客様を逃してしまっていたことに気づいたのです。 ベルフェイスのカスタマーサクセスと「売る」はこのような現状ですが、Reproさんは、今までどのように販売をしてきたのでしょうか。
佐々木翼氏(Repro株式会社、以下敬称略):マーケティングテクノロジーのツールをサブスクリプションで販売しているReproでは、立ち上げ当初は、カスタマーサクセス部門はお客様にプロダクトを使いこなしてもらうことにフォーカスし、アップセルやクロスセルに関する権限を一切持たない部門でした。アップセル/クロスセルに関して、カスタマーサクセスはお客様の相談に乗りますが、クロージングはセールス部門に委ねる方法です。しかし、2年ほど前にこの方針を転換し、アップセル/クロスセルのクロージングまでをカスタマーサクセス部門が担うようにしました。