インタビュー 「大企業による新規事業」のリアル

エムアウト流“マーケットアウト”の新規事業とは?──paizaの事例にみる、事業創出と起業家育成

第9回 ゲスト:エムアウト 福岡克績氏、paiza 片山良平氏

 新規事業開発に携わる方へのインタビューを通じて、大企業内の新規事業開発における美学を探る本シリーズ。今回のゲストは、株式会社エムアウトの取締役・新規事業開発部長の福岡克績氏と、エムアウトで2012年に新規事業としてギノ株式会社を立ち上げ、2020年3月にMBOにより独立、社名変更したpaiza株式会社の片山良平氏です。
 スタートアップファクトリーを標榜し、数々の新規事業を生み出してきたエムアウトから、どのようにITエンジニア向け総合求職・学習プラットフォーム「paiza」を運営するpaizaが生まれ、MBOに向かったのか。ゲストのお二人に、本気ファクトリー株式会社代表取締役の畠山和也氏がお話を伺いながら、大企業内での新規事業開発のヒントを探りました。

[公開日]

[語り手] 福岡 克績 片山 良平 [聞] 畠山 和也 [取材・構成] フェリックス清香 [写] 和久田 知博 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] スタートアップ 事業開発 企業内起業 大企業 MBO

  • ブックマーク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

マーケットアウトで新規事業を成功させる“ 6つの条件”

畠山和也氏(本気ファクトリー株式会社代表取締役、以下敬称略):エムアウトさんは新規事業を生み出す専門の企業ですよね。イグジットしたときのみ売り上げが立つと聞きました。

福岡克績氏(株式会社エムアウト 取締役 新規事業開発部長、以下敬称略):そうですね。ランニングの収益がなく、事業を創って数年後にイグジットをし、資金を回収してまた新しい事業を創ることを繰り返しています。ある意味相当リスクが高い事業体ですね。

畠山:1を100にするようなプロ経営者は増えてきていますが、0から1を生み出す事業創出のプロはあまりいませんよね。継続的に新規事業を生み出していくにあたって重要視しているポイントを教えてください。

福岡:エムアウトを2002年に創業してから、いくつかの事業は成功しましたが、その倍以上の失敗をしています。失敗を重ねる中で事業開発の仕組みを考え、ノウハウを構築してきました。

 現在は成功する新規事業の条件を「成功するマーケットアウトビジネス6つの条件」としてまとめており、事業開発のコンセプト策定時に確認しています。簡単に紹介すると、以下の6つです。

  1. マーケットの特定
  2. プロダクトアウト業界の特定
  3. 発想の転換
  4. 絶対的付加価値
  5. スケールメリット
  6. 発展形

 プロダクト起点ではなく、ユーザー起点で考えるのが、エムアウトのやり方なので、この条件を重要視しています。

片山良平氏(paiza株式会社 代表取締役CEO、以下敬称略):事業のアイデアを出すときには、この内容を常にシビアに確認されます。エムアウトでは毎週1つコンセプトを考えるよう言われていましたが、これを通じてビジネスモデルを考える上で必要な発想がインストールされたと感じています。

畠山:この条件を満たしたコンセプトを作った後は、どういう流れで新規事業開発を行うのですか?

福岡:コンセプトを30個程度ため、その中から確度の高いものを6つほど選びます。この段階ではあくまでも仮説にすぎないので、その後インタビューをしたりユーザーと同じ体験をしたりして深掘り調査をし、確度の高いものを選んでフィジビリティスタディのフェーズに入ります。その後、投資をして、サービスを作り込んでいくという流れです。

畠山:コンセプトの確度の高さは、どう判断するのでしょうか。

福岡:ユーザーと業界の問題、コンセプトにある発想の転換、その事業が今後発展していく形が、すべてすっきりとストーリーで繋がるものを確度が高いものとしています。

片山:その事業に対して熱量があったり課題感を持っていたりすると、ストーリーが“イケてる”ように錯覚してくるのですが、ここで冷静になる必要がありますね。

畠山:確かに強引にストーリーを組み立てると、後で必ず躓きますよね。事業アイデアがうまくないときは、3歩進んでは2.5歩下がったり、ときには4歩下がったりして、なかなか進みません。一方で、成功するものは3歩進んで5歩ジャンプするような、スーッと通るストーリーができるんですよね。両方を経験していると、筋がいいものを見つけたときに「これだ!」とはっきりわかるようになります。

片山:不思議ですよね。ただ、3歩進んで4歩後退することは、事業を創り上げていくために必要な経験だと感じます。私は、paizaを立ち上げる前に人材紹介の事業をやっていたのですが、それはストーリーがうまく通っていなかったんです。でも、そこでの失敗が今paizaに生きていると感じます。

バックナンバー