インタビュー 第二創業~両利きの経営の先へ

両利きの経営で「第二創業」する4つのステップ──時間軸の違う組織を統合する、存在目的と物語とは?

Vol.2-1:慶應義塾大学院 特任教授 梅本龍夫氏、アクション・デザイン代表 加藤雅則氏

 世界中が混沌として先が見えない今、次なる事業の柱を見つけて「第二創業」を果たさなければ自社は生き残れない。そのような危機感を持つビジネスパーソンに向け、本連載では「両利きの経営」理論を拠り所にしながら日本企業の再生のあり方を議論していく。
 基本理論を押さえた前回に続き、「両利きの経営」の提唱者であるオライリー教授の日本における愛弟子で、日本の大企業でエグゼクティブ・コーチを務める加藤雅則氏、慶應義塾大学院の特任教授で、サザビーリーグ(現ササビー)の元経営企画室長、日本でスターバックスコーヒージャパンの立ち上げに携わった梅本龍夫氏の両名が、混乱する日本企業の現状と第二創業の可能性について、より具体的に実践的に語る。

[公開日]

[語り手] 梅本 龍夫 加藤 雅則 [取材・構成] やつづかえり [画] 青松 基 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 中期経営計画 両利きの経営 バックキャスト思考 存在目的

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御社の中計は“数字の積み上げ”で作成していませんか?

──今年は未曾有の環境変化に直面し、中期経営計画(以降、中計)を見直す企業も多く出てきそうです。多くの企業との接点があると思いますが、日本企業の中計策定プロセスについてどのようにお考えですか。

加藤 雅則氏(アクション・デザイン代表 エグゼクティブ・コーチ、組織開発コンサルタント、以下敬称略):3月に『両利きの組織をつくる――大企業病を打破する「攻めと守りの経営」』(英治出版 加藤雅則、 チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデ著)を出版して以来、経営企画担当の方から数多くのコンタクトがありました。2020年が中計の最終年度だという会社も多いですから、次の方向性を模索しているんでしょう。

 そこでよく説明させていただくのが、「中計を“作業”にしちゃっていいんですか?」ということです。「既存事業でそれぞれの部署が毎年何パーセント伸びて、市場の伸びはこれくらいだから、うちのシェアはこれくらいになります」といった数字の積み上げをするだけの中計って意味があるのか、と議論させていただきます。もっと突っ込んで「そこに意志はありますか?」と問うと、皆さん困った顔をされます。

 「どうなりたいのか、何のためにやるのか、そこを話しませんか?」と説明するのですが、ほとんどの人はそこで会話が止まります。「もう一度経営陣と話してきます」みたいなことになっちゃうんですね。

──来年度予算などは「売上は前年比103%増」といった暗黙の了解がある会社も多いですよね。

梅本 龍夫氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授/iGRAM代表取締役 物語ナビゲーター、以下敬称略):20年前、僕がサザビーリーグで経営企画室長をやっていたときも、103%くらいで計画を立てさせていましたね。というのも、小売業では既存店を前年より伸ばさないと新店を増やしても全体が伸びないし、ブランドとしてだめになってしまいます。だから既存店をいかに伸ばすかが重要だったのですが、105%は無理だし101%では誤差の範囲にしかならない。103%というのは国の経済運営におけるインフレターゲットにも通じる数値感覚であり、既存ビジネスが中期的に成長するためのターゲットとして一定の納得性がありました。

 ただ、これは経済成長が続く中で安定した経営ができるという前提があった1980年代中盤までの話です。バブル崩壊後、この前提は崩れたのですが、1990年代はまだ経済が循環的に戻ってくるという期待もあり、過去の実績に数パーセント上乗せするというやり方が一般的でした。現在は、どうやって未来をつくっていくのか、混沌とした状況にありますよね。

加藤:今は今期末の決算の予想さえ出せない状況だから、過去の売上や今後の市場予測をもとに中計を作成しようとしていた人たちは一層困っているでしょうね。こんなときだからこそ、前年売上比103%みたいな既存の枠組みから抜け出す必要があります。

加藤雅則加藤 雅則氏(アクション・デザイン代表 エグゼクティブ・コーチ、組織開発コンサルタント/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 兼任講師)

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