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朝倉祐介氏が語る、日本企業が陥るPL脳の問題点と経営に活用する「ファイナンス思考」とは?

BeyondTheBlack TOKYO 2020 レポートVol.2:シニフィアン株式会社 共同代表 朝倉祐介氏

 「ファイナンス思考を持たない企業人は、出場している大会がトーナメント戦なのかリーグ戦なのかを知らずにプレイしているサッカー選手と同じである」。そう語るのは、当時、成長に陰りが見えたミクシィを代表取締役就任後1年で立て直した朝倉祐介氏。予算と実績の管理等や企画立案時に予算を考えはするものの、ファイナンスは基本的には経理部や財務部、経営企画部が考えるものだという認識を持つ企業人は多いだろう。全ての企業人が知るべき「ファイナンス思考」とはどんなものなのだろうか。8月26日に行われたBeyondTheBlack TOKYO 2020での朝倉氏の発表内容を紹介する。

[公開日]

[講演者] 朝倉 祐介 [取材・構成] フェリックス清香 [画] 青松 基 [編] 栗原 茂(Biz/Zine編集部)

[タグ] 企業戦略 コーポ―レートファイナンス PL BS キャッシュフロー

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多くの日本企業が陥る「PL脳」の問題点と帰結点

「日本の多くの企業はPLを中心にしたものの考え方に囚われすぎている」

 朝倉氏は講演の中でこう指摘し、その発想を「PL脳」と呼ぶ。PL脳は売上や利益といったPL(損益計算書)上の指標を目先で最大化するような思考態度である。

 PL脳に支配された企業では、よくこんなフレーズが聞かれる。

「増収増益を果たすことこそが社長の使命である」
「うちは無借金だから健全経営である」
「黒字だから問題ない」
「今期は減益になりそうだから、マーケティングコストを削ろう」

 こういったPL脳が問題なのは、3つの重要なものを軽視しているからだ。

 1つめに軽視しているのは「キャッシュ」である。PLで表現されているものはキャッシュではない。PLでは前受金を売上高として前倒計上したり、のれん代等減損費用をコントロールしたり、本来は営業活動に紐づく費用を特別損失として計上したりすることができる。つまり、PLには解釈の余地があり、利益はある意味で「見かけ上、作ることができる」。しかし、いくらPLがきれいで増収増益が果たされたように見えても、キャッシュがなくなれば会社は潰れる。

 2つめに軽視しているのは「資本コスト」である。銀行からの借入や株式の発行等、外部から調達した資金には利子や期待されるリターンといった、資本コストが発生しているが、その意味がきちんと考えられていない場合も多い。例えば、個人の資産運用において、利回り3%の金融商品を購入するために利子8%の借金をすることは絶対にないだろう。ところが、企業経営においては、資本コストに満たないリターンしか実現できていない場合でも「黒字だから問題ない」といった非合理な判断がなされていることが少なくない。

 3つめに軽視しているのは「事業価値」である。目先の売上だけを考えるとコストに見えるマーケティングやR&Dも、本来は将来大きなリターンを生み出すための先行投資のはずである。コスト削減にばかり意識が向き、縮小均衡に陥っていることはないだろうか。

 平成元年には世界の企業の時価総額ランキング20位圏内に入った日本企業は14社あった。しかし、平成30年では43位にトヨタが入っているだけで、20位以内には皆無である。また平成元年から平成30年までのTOPIXとS&P500の成長差は8倍であり、日本企業の凋落ぶりは甚だしい。PL脳になってしまい、戦略的な投資が行えなかった帰結ではないかと朝倉氏は指摘する。

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