「EC」での非対面接客で「リアル店舗」にお客様を呼ぶ秘訣
非対面接客の仕組みを空色の支援によって実現し、継続的な関係づくりを実践している事例として、中嶋氏はアパレルブランドの「ナノ・ユニバース」の取り組みを紹介した。
「ナノ・ユニバース」は約5年前の時点でECでの売上高が全売上の4割と、オンラインでの購買比率が高かった。当時から店舗と同等の接客体験をECで実現させることが早急に求められており、5年前に空色の支援で、コールセンターとチャットセンターの一元化による「マルチチャネルコンタクトセンター」を構築した。公式アプリケーションやオンラインサイトの中に「問い合わせ」ボタンを設け、クリックするとチャットセンターからスタイリストがコーディネートなどの相談に乗るという「チャット接客」を実施した。すると、オンライン購入者の約4割が店舗にも来店するようになったという。
中嶋氏は「近年OMO(Online Merges with Offline)などが注目され、いかにオンラインからリアル店舗への送客、両者を横断した顧客体験を提供するかが課題になっている。しかし積極的に新たな仕掛けを設けなくても、既存のECチャネルの中にリアル同等の接客体験を加えるだけで、リアルでしか体験できない価値を顧客側で自然と求めるようになる」と語り、「ブランドや店舗と顧客をつなぐ役割において、非対面接客を有効な施策とするためには、店舗で提供する接客体験価値を非対面でも再現できることが大切」と強調した。また導入後も、顧客が実際に洋服を選ぶ際の行動を改めて考察し、「チャットボタンの効果的な設置場所」や「チャットボットの対応割合」など改良を重ね、購入率アップを追求しているという。
さらに2年前より空色のAIチャットボットを導入し、問い合わせ対応の効率化だけでなく、商品の検索の代替や、スタイリストに引き継ぐ前の事前応対などの役割も担わせている。有人とAIのハイブリッドな接客によって、より快適な接客体験を実現することに成功した。
「マルチチャネルコンタクトセンター」では、チャット接客だけでなく、電話やメールでの応対も並行して行っている。中嶋氏は、それぞれのチャネルによって重視される「接客価値」が異なることを紹介。電話なら緊急性が高く即時対応が求められるのに対して、メールの場合は証跡(応対履歴)が必要な問い合わせであることが多い。また、電話するほどでもないという日常的なコミュニケーションであれば、断然チャットが有効だ。
中嶋氏は「こうしたチャネルによる顧客のニーズの違いを理解した上で、チャネル横断で適切な顧客体験を実現することが大切。さらにカスタマーサポートだけでなく、ギフトや商品に関する問い合わせ対応としてチャットの中で画像や動画を用いて、セールス機会を損ねないよう即時性のある対応を行うことが大切」と強調した。