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再現性のあるイノベーション経営の型

三井化学 表利彦氏が40年の経験で得たイノベーションの型──R&DのRとDで異なる役割と組織構造とは

【前編】ゲスト:三井化学株式会社 社長補佐/新事業開発センター担当 表利彦氏

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 本連載は、Japan Innovation Network(JIN)の理事・アドバイザーをナビゲーターに、大企業において「システマティックなイノベーション」を実現するための経営・組織・カルチャー変革に携わるキーパーソンをゲストに迎え、その取り組みや考え方に迫る。初回は代表理事の紺野登氏(多摩大学大学院教授、エコシスラボ代表)とゲストの三井化学株式会社 表利彦氏(社長補佐 新事業開発センター担当)が、表氏の前職である日東電工時代からの経験を振り返りつつ、IMS(イノベーション・マネジメントシステム)の意義、再現性のあるイノベーションへの挑戦について対談した。

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イノベーションを実現する組織に共通して存在するシステム

──今回は三井化学の表さんをゲストにお迎えしました。紺野先生からその意図をご説明ください。

紺野登氏(以下、敬称略):表さんとは、もう10年以上前に経産省のイノベーション研究会の委員としてご一緒したときからのお付き合いで、当時から日本の大企業におけるイノベーションの第一人者でした。その後、日東電工から三井化学に移られて、現在ではイノベーションだけでなくR&Dにも知見のあるオールマイティの方として、今日はお迎えしました。

表利彦氏(以下、敬称略):本日はよろしくお願いします。

表利彦
三井化学株式会社 社長補佐/新事業開発センター担当 表利彦氏

紺野:最初に、IMSについて簡単に説明させていただきます。イノベーションというと、どうしても、デザイン思考やインキュベーション・ワークショップ、アイデアソンなど、目新しい、目立つ活動に注目しがちです。しかしそのような活動を重ねてもなかなか上手くいかない。これまで培ってきた本業においては安定を求める力が強く、不安定なことをやるイノベーションが排除されてしまうという「慣性」と「構造」の法則があるからです。

 そこで、安定を求めるような大組織でも、未来を生み出すための不安定さを意識的に取り入れて成長していけるようなマネジメントシステムを形成していこうというのが、IMSの意図です。

 ときおり誤解する人もいますが、IMSという言葉が意味するのは個々の「イノベーションのシステム化」ではなく、「イノベーションのためのマネジメントシステム」だということ。これらは全く違う意味なのです。イノベーションを生みやすくする経営システムに変えていこう、というニュアンスなんです。

 リーンスタートアップ手法の生みの親であるスティーブ・ブランク氏は、先ほど挙げたような表層的なイノベーション活動を「イノベーション劇場」と表現します[1]。私たちは、イノベーション劇場ではなく、その背後にある仕組み、例えば人事や財務、R&Dなど様々なタッチポイントとつながってシステマティックにイノベーションを起こしていくような体制を「IMS」と呼び、それが再現性、そして持続性のあるイノベーション活動の鍵だと考えています。

 実はこのような活動は、イノベーションに成功する企業が半ば意図せずやってきたことです。そのような実践者たちが議論して成功体験を集約し、共通言語化したのが「ISO56000シリーズ:イノベーション・マネジメント(IMS)規格」です。これはリーマンショック後の劇的変化を受けて構想されはじめました。そして世界のどのような規模や地域の企業でも、体系的にイノベーション経営ができるように各国が協力して作成してきたんです。(注:一般社団法人Japan Innovation Networkは日本代表として国内審議委員会の運営を行っている)

 共通基準ですから、自社の状況や能力に合わせたカスタマイズすることが必要です。また、共通尺度や共通言語があれば他社との共創においてもすり合わせが楽になります。スタートアップとの協業やオープンイノベーションでも協業が見えやすくなるわけです。

 例えば両利きの経営に取り組むとしても、従来と変わらない経営システムのままではイノベーションは起きません。イノベーションに真剣に取り組もうとする企業が、このISO56000シリーズのようなシステムを「型」として上手く使いながら、それぞれの勝ちパターンを作り上げていくというのが、IMSの重要な役割、込められた意図です。

紺野登
一般社団法人 Japan Innovation Network(JIN) 代表理事 紺野登氏

[1]イノベーション劇場”を脱却せよ──スティーブ・ブランク氏が提唱する「第三世代のイノベーション」とは』(Biz/Zine、2023年12月)

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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