業界別シナリオを基盤にトータルな非対面接客の仕組みづくりを支援
実際のチャット接客や運用の一例として「世界文化社」が展開する男性向けWebマガジンの「Men's EX ONLINE」での活用が紹介された。そのサイト内またはモバイルアプリの画面上に、チャットボタンが配置され、それをクリックすることでチャットを開始できる。チャット開始ボタンは自由に編集ができるため、設置場所やデザインなどもサイトに合わせて変更できる。チャットウインドウの中ではベースシナリオで映像や動画などを掲載しながら展開するので、AIによるチャットボットながらリッチなコミュニケーションができる。必要であれば有人チャットに切り替えて対応することも可能だ。
こうしたチャットボットをどのような内容にするべきか、また有人チャットとどのように切り替えるか、シナリオ設計は悩むところだが、そのコツとして、中嶋氏は「課題が顕在的か潜在的かで切り分けること」を勧める。顕在ニーズといえば、「IDがわからない」「パスワードを忘れた」といった問い合わせならば、同じ回答を返せば課題の解消ができる。他にも「返品の仕方を知りたい」「一番人気のアイテムを知りたい」など、既に決まっているものであれば、同様にAIボットで十分対応できるだろう。しかし、「私に合うジャケットを知りたい」「ギフトを購入したい」といった相手によって答えが変わるもの、もしくは顧客側のニーズがまだ定まっていないものについては、まだまだ人の力が必要となる。
それでは課題の顕在・潜在が一定分類できるとして、どのようにシナリオを組み立てればよいのか。そうした企業側のニーズに対して、空色ではこれまで実施してきた各業界でのオンライン接客のログデータに基づき、各業界向けのベースシナリオを提供しているという。これによって、AIチャットボットが対応する会話範囲をベースシナリオとすることで、学習コストを大幅に低減し、スムーズな導入がかなう。
そして有人チャットセンターの構築・運用について失敗するケースについて、中嶋氏は「コールセンターや店舗のスタッフに何のフォローもしないまま、チャットセンターの仕事をさせようとした結果」と指摘。その理由として「非対面接客のゴールを設定せずにスタートしていることが多いこと」をあげ、「どのようなゴールについて、どのようなKPIを設定するか、要件を決めることが大切。空色では既に業界ごとにその雛形が設計されており、それに則って要件定義を行いながらPDCAサイクルを回せるようなチャットセンターの運用支援まで提供できる」と強調した。
たとえば対面接客と非対面接客の大きな違いは、「相手の顔色が見えるかどうか」だ。店舗なら顔色や仕草、目線など、コールセンターでも声色から相手の様子をうかがい、対応を変えていくことができるが、チャットの場合はそうした相手側の状況がほとんどわからない。そのような状況下で、どのようなステップで最終的な商品提供までつなげていくか。その点においても、空色では創業以来蓄積した運用ノウハウを提供できるという。