多言語対応とは単なる「機械翻訳」ではない
Webサイトやアプリを多言語化する場合、言語を単に機械的に翻訳すればいいだけではないかと思うかもしれないが、実際にはそうではない。たとえば親指と人差し指でまるをつくり、残りの三本指を立てたイラストを書いた場合、日本の文化ではOKを示しているものと認識されるが、別の文化では人種差別的に受け取られることもある。このような宗教・文化・政治等の背景を考えて不快にならないようなデザインや翻訳を行う「カルチャライズ」が必要である。
また、翻訳した言葉は多くの場合、日本語よりも長くなるため、サイトのUI・UXが崩れてしまうという可能性もある。文字の流れ方が日本語と違うこともあり、その場合は視線の動線も異なるため、ボタンの位置等を変える必要が出てくることもある。こういったことへの対応も必要となる。さらに企業のサイトは更新頻度も高いが、情報が出るタイミングが言語ごとにばらつくのでは不都合である。可用性も考えつつ、情報の同一性も瞬時に担保できるようにしなくてはならない。
加えて、外国語でアクセスしやすくするということは、さまざまなサイバー攻撃を受けやすくなることでもあるため、セキュリティ対策も必要となってくる。こういったさまざまなシステム要件の領域にも意識が必要だ。それらを、商品ページ、マイページ、カート、決済ページ等、すべてのページで行っていく。すると初期開発段階で多くの工数と期間、コストがかかってくる。
さらに、多言語化には運用でも複雑な対応と潜在コストの想定が必要だ。国や言語、文化ごとに良いとされるSEO対策やプロモーション、受けるコピーライティングが異なる。法規制や商習慣も違うため、国によって使わない用語や商品を決めなければならない、などの配慮も必要になってくる。そのため、自社で多言語対応をするには多くの専門人材が必要になってくる。さらにその専門人材は、国ごと、言語ごとに分かれているため、言語別に開発を行う必要が出てくる。