“新事業”ではなく“新産業”を生み出すSUNDRED
小関貴志氏(ジャパン・クラウド・コンサルティング シニアディレクター、以降敬称略):留目さんは大学卒業後、日本の商社に就職して発電プラントの海外営業等を経験し、戦略コンサルタントに転身。その後、DELLなどのIT業界に入られたんですよね。レノボでは、IBMからPC事業を買収した直後の入社で、大変な状況から事業再生を経験されています。
留目さんと私はDELLとレノボでご一緒しましたが、特にDELLでは“オペレーション・エクセレンス”、つまり競争上の優位性になるレベルまで業務プロセスを改善するようなスタイルのマネジメントをされていました。そして今は、SUNDREDで新産業を創る仕事をされています。様々なご経験をされてきた留目さんが考える、ミドルマネジメントのマインドセットや今後の働き方についてお聞きしたいと思います。まずは今のお仕事を始めた経緯からご紹介いただけますでしょうか。
留目真伸氏(SUNDRED株式会社 代表取締役、以降敬称略):今は新産業共創スタジオという、社会を起点に新しい目的(パーパス)を共創するところからプロジェクトをスタートし、その目的を実現するための新産業のエコシステムを構築しながら新事業を生み出し、投資も行っていくという仕事をしています。
こういった仕事を行っているのは、レノボ時代の経験が基になっています。ご紹介いただいた通り、DELLやレノボのPC事業では、どん底から事業再生を行ってグローバルでも日本でもトップシェアにすることができました。成熟したPC市場でトップに立った後は、新規事業に新たな成長軸を求めてタブレットの事業などを始めたんです。
実際にやってみてわかったのは、「タブレットは単価も安くシンプルなものであるのに、売るのが非常に難しい」ということです。なぜなら、タブレットのような新しいデバイスはデジタルトランスフォーメーション(DX)そのものであり、トランスフォーメーション無しに既存の仕組みにアドオンするだけでではコスト増になるだけだからです。DXは、業界の構造を大きく変えたりサプライチェーンを変えたりして、“新しい価値創造の仕組み”を実現するものです。一社で実現することではなく、スタートアップ等も含めた複数の会社で全体の仕組みをデザインして創り上げていく必要があります。私も企業の外に出て様々な人と会ううちに、これは新規“事業”ではなく新しい“産業”を創っているんだという感覚になってきたんです。それで、SUNDREDで新産業共創スタジオをスタートさせました。
小関:SUNDREDが手がけているものの中でホットなのはどんな産業でしょうか。
留目:今は約12個のプロジェクトを進めています。その中でも、デジタル聴診デバイスのスタートアップをトリガーにしながら遠隔診療のエコシステム創りをしているユビキタスヘルスケア産業はコロナ対策にも有効ですしホットですね。また、100年人生を生きるために「社会寿命」をマネージできるようにしていくセルフデベロップメント産業、安心・安全・サステナブルな陸上養殖を進めるフィッシュファーム産業、そして子供を創るというイベントに関わるサービス群をまとめていくプレコンセプションケア産業などは政府も後押しする産業です。