インタビュー 「大企業による新規事業」のリアル

ランドログ明石氏が語る新規事業──“トップの本気”と“コミュニケーション”が事業を加速させる

第16回 ゲスト:株式会社ランドログ 明石 宗一郎氏

 新規事業開発に携わる方へのインタビューを通じて、大企業内の新規事業開発における美学を探る本シリーズ。今回のゲストは、株式会社小松製作所(以下、コマツ)、株式会社NTTドコモ、SAPジャパン株式会社(以下、SAP)、株式会社オプティムの4社によって設立された株式会社ランドログのChief Digital Officer、明石 宗一郎氏です。
 ランドログは、建設業務における生産プロセスに関与する、土・機械・材料などのあらゆる「モノ」のデータを提供し、「コト」で現場に貢献するソリューションをサポートするプラットフォームです。SAPから出向した明石氏が、ランドログ立ち上げや運営を通して感じている新規事業開発における強みを聞きました。聞き手は本気ファクトリー株式会社代表取締役の畠山和也氏です。

[公開日]

[語り手] 明石 宗一郎 [聞] 畠山 和也 [著] フェリックス清香 [編] 梶川 元貴(Biz/Zine編集部)

[タグ] 事業開発 DX 新規事業 企業内起業

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ランドログが解決を目指す建設現場の“課題”

畠山和也氏(本気ファクトリー株式会社代表取締役、以下敬称略):ランドログは、コマツ、NTTドコモ、SAP、オプティムの共同出資によるジョイントベンチャーで、明石さんはSAPから出向という形で参画なさっているのですよね。ランドログはコマツが他社に呼びかけて始まった、データによる現場の生産性を高める事業を行っていると聞いています。事業内容を詳しくご説明いただけますか。

明石宗一郎氏(株式会社ランドログ Chief Digital Officer、以下敬称略):コマツは2001年から、「KOMTRAX」という建設機械の情報を遠隔で確認し、保守に活かしたり、稼働状況を確認したりするためのシステムを提供しています。これはビジネススクールのケーススタディにもなっている有名な事例なので、ご存知の方も多いかもしれません。そこから建機以外のソリューションとして、現場全体をICTで有機的につなげることで生産性を大幅に向上させる「スマートコンストラクション」を提供し始めました。スマートコンストラクションは2015年に始まったのですが、それを切り出して、コマツだけではなく他社とともに考えようと立ち上がったのがランドログです。

畠山:具体的にはどのような課題を、どのように解決する事業なのでしょうか。

明石:建設業界をご存知ない方も多いと思うので、先にバックグラウンドから説明します。建設業界って非常に非効率な部分が残っている業界で、多重下請け構造になっており、複数の小さな会社が1つの現場に集まって仕事をしているのもその一例です。また、建機の操作が非常に属人的な点も非効率な部分です。平面に書かれた図面を読み、三次元の状態をイメージして操作する必要があるため、経験が必要となります。10年かけて一人前に建機の操作ができるようになるといったような、職人技の世界が今でも主流となっています。

 それから、現場で“待機時間”という無駄が発生しているのも課題でした。建設現場は様々な建機や作業者がチームワークで仕事をしています。たとえばある会社がショベルカーでの掘削を効率化したとします。しかし、別の会社が掘り出した土をダンプカーで別の場所に移動させなければ、掘削を続けることはできず、ダンプカーを待つ時間が必要になるのです。

 これまでコマツは、ICTを活用して経験の少ない人でもコマツの建機を効率よく使えるようにしたり、これまでは2人で測量して図面を作っていたものをドローンに置き換えたりすることで、建設現場の生産性が上がるサービスを提供してきました。しかし、それだけでは現場の非効率は解決しません。真の効率化のためには、現場の全ての人が情報を提供し合い、可視化することが必要だったのです。

畠山:ダンプカーが来ないのがわかっていたらその時間で休憩に入れたのに、というような状況が多発していたということですね。

明石:そうです。そこで、他社製であったり古かったりする建機にも取り付けられる、3D-マシンガイダンス機能やペイロード機能などが備わっている後付けキット「スマートコンストラクション・レトロフィットキット」をランドログからレンタルで提供し始めました。これがあれば、建機全体の操作効率も上がりますし、建機同士の位置情報等も可視化できます。建機は乗用車ほど入れ替えも頻繁ではないので、後付けキットを提供していくことは、ランドログにとってもメリットが大きいんですよね。

バックナンバー