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後発サービスで競合に勝つ方法──勝機と商機を生み出す「マイナスの差別化」とは?

 ビジネスモデルを考えるときに、競合と差別化するにはどうすればいいか。これは、新規事業や事業開発に従事する人の頭を常に悩ます問題です。特にサービス業のように「人」が起点となるビジネスはその場でのサービスが主たる製品であることから、差別化が難しい傾向にあります。私が代表を務めるリカレントは、研修業界に後発として参入しながら競争力のあるサービスを目指すにあたって、「マイナスを考えることで差別化ができる」を意識してきました。今回は、その理由について具体例を交えて紹介します。

[公開日]

[著] 松田 航 [取材・構成] 桐生 幹太

[タグ] 事業開発 経営戦略

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“人”が商品であると差別化が難しい

「サービス業は差別化が難しい」

 サービス業に従事したことがある人なら、この考えに肯いてもらえると思います。実際、サービス業は他のビジネスに比べて差別化が難しい業種になります。理由はシンプルで、サービス業の主たる商品が“人”だからです。

 モノが商品であれば、何らかの違いは作れます。常にコモディティ化の恐れはありますが、それでも明確に差というものを作ろうと思ったら、

  • 小型の自動車
  • 扉が横にスライドする自動車
  • 安全性の高い自動車
  • カーナビの付いた自動車
  • 電気で走る自動車
  • 自動運転する自動車

など、特性を持たせた商品を作ることはできます。また、それぞれを他社が模倣して同質化戦略を取って来たとしても、半年〜1年ほどは同じものが出るまでに猶予があります。

 しかし、サービス業の商品である「人」の差別化は容易ではありません。その理由は2つあります。

どれだけ差別化しても、すぐに追随されてしまう

 1つ目の理由は、「量産化ができない」ということです。

 サービス提供者は常に同じ人ではありません。ある特定の人が完璧でも、他の人がその人とまったく同じ水準で高い品質を出すことはできません。モノやITサービスであればまったく同じものを提供することが可能ですが、人である限りそれはとても難しくなります。

 常に同じメンバーが提供できていれば教育訓練の結果が表れますが、会社であれば必ず人の入れ替わりは起きます。どうしてもムラが出てしまうのです。

 また、人には「転職」という選択肢があり、ある人が競合他社に移ってしまったら、差別化の多くの要素がそのまま競合他社に移転してしまう恐れもあります。

 2つ目の理由は「やろうと思ったら大半のことはできてしまう」ことです。

 製造工程などとは違い、人は元々柔軟性が高く、それこそが人の特性でもあります。そのため、人が主となる商材でビジネスをしていると、「競合他社がこんなことをやっているらしい。じゃあ、我々も負けずにそれをやろう」と思うと、多くのことは実行できてしまうのです。

 たとえば、マッサージ店の場合を考えてみます。マッサージ店はサービス業です。マッサージ店で差別化を行おうとするとどうなるでしょうか? よりよいマッサージ方法を導入してみることになります。

 同じく人がやっている他店で、そのマッサージ方法ができないかというと多くの場合、できてしまいます。では、機械を導入するとどうでしょうか? これも自社で作っているわけではないので、競合他社も割とすぐに取り入れることができてしまいます。

 美容院なども同じで、眉カットがついてきます、マッサージが付いてきますといった加点を得るための差別化は、他店もすぐに追随できてしまいます。これが、人がサービスを提供する業種の難しいところです。

 飛行機でのサービスはどうでしょうか。いろいろな航空会社の差を頭に思い浮かべてみればわかりますが、やはり差別化するのは難しくなっています。座席指定ができるようにすれば、他社も座席指定ができるようにします。システムを少し変更し、案内のマニュアルを作るだけで対応できてしまいます。

 差を作っても、数週間・数ヵ月の差しかなく、差別化努力をしただけ大変になっていくので、競合他社も含めみんな揃って利益率低下という未来が待っています。

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