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事業創造のためのカスタマージャーニー

御社が描く「カスタマージャーニー」は、ただの「商流」ではないですか?

前編:「顧客接点の変化」から考える、顧客行動の正しい理解

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そもそも企業は正しく「顧客行動」を把握していたのか?

長谷川:
 「企業の描いていたCJM」と「顧客の実際の道筋」のギャップの原因の1つは、おっしゃるとおり「チャネルの変化」ですが、もう1つ、企業側のCJがそもそも顧客を見ていたのかという疑問があります。まったく見ていないわけではないと思いますが、実際はどうなんでしょう。

加藤:
 どちらかというと、実際のCJというより、企業なりの商品を売るプロセスを描いていますね。

長谷川:
 そうですよね。商流の構造やチャネルの物理的制約で、たとえば車はディーラーで買わざるを得なかったので、そんなにダイナミックに考える必要がなかった。それが今、いろんな情報がネットで得られて、購入の自由度もあがった。だから、実はこれまで見ていたのは顧客行動ではなく、単なる商流だったことが顕在化したということが、ひょっとしたらあるんじゃないかな。

加藤:
 まさにそうですね。CJといっていたけれど、実際には商流に過ぎなかった。車もほんとうに制限されている。それで、日産は、アマゾンで車を買う体験キャンペーンを展開したりしています。最近は化粧品もEコマースで買えるようになっていますが、うちはカウンターに来ないといけないのがウリだと、ECを永遠に否定している化粧品会社もあったんですね。広告宣伝をしてカウンターに来てもらって使い続けてもらうモデルとEコマースが対立していた。最近ようやくマージされてきて、両方の相乗効果が証明されてきた。やはり、お客様はチャネルを問わず買いたいだろうと思うんです。

長谷川:
 顧客だけではなくて、サプライヤー側の自由度もあがっているわけですよね。大企業だけでなく、小規模ECも楽天などを使って、マス的なものを安く売って価格競争しているところもあれば、こだわりのものだけを売っている小さなお店もある。ロングテール型の個人商店も成立するようになってきた。それに応じて顧客側も「共進化」していき、ロングテール型のものも受け入れたい人は受け入れられるように、マーケットが成長していると言えると思います。

 普段は近くのスーパーで買っているけれど、来客があってバーベキューをやるときには三陸の牡蠣を取り寄せるとか、従来はなかなかできなかったことができるようになっている。それによって、マーケットの期待値もあがっていって、顧客側もマスのものだけではなくて、こだわるところはこだわるようにマーケットも変わってきているというのが、まさに2015年現在の状況だと思います。だんだん世の中の状況が変わってきて、旧来のモデルでの顧客像の描き方から脱却しなきゃいけないという動きが生まれているのだろうなと思っています。

加藤:
 今の企業の取り組みにいくつかの方向があるとして、そこから発展して、CJMをどういうふうにイノベーションに適用していくのか。長谷川さんにその先のお話をお伺いしたいですね。

* * *

(編集部より)次回は、中編として、「カスタマージャーニーマップの4象限」を起点として進んだ対談内容をお届けする。

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