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「自然資本」と経営・事業の統合

企業が取り組むべき「TNFD」の情報開示──国内外の動向や開示のステップ、直面する課題とは?

2023年9月に最終版『v1.0版』リリース予定 ステークホルダーの関心や留意すべきポイントを解説

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 自然資本に関するリスクと情報を開示していく枠組みであるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)。2022年11月に『ベータv0.3版』が公開されて以降、2023年9月には最終版である『v1.0版』がリリースされる予定となっています。現在、TNFDを巡って、自然資本を取り巻く情報開示はどのような動向・潮流にあるのか。そして、自然資本関連の財務情報開示要求に向けて、企業はどう備えるべきなのか。SDGsを起点とした中期経営計画の策定やTCFD対応など、サステナビリティ視点を組み込んだ企業の経営戦略の立案支援を行うEYストラテジー・アンド・コンサルティングの専門家が、押さえておくべきポイントについて解説していきます。

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「TNFD」とは? “自然版TCFD”が注目される理由

 気候変動に関連した財務情報の開示を企業に求めるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)と同様、自然資本に関するリスクと機会を企業が把握し、行動していくための情報開示のフレームワークが「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」です。

 自然資本とは文字通り、水や土地、生物多様性や海洋など自然に関するものを示します。そしてTNFDとは、企業が大気、水質、土壌汚染や、生態系の破壊など、自然へ与える影響の開示を求めると同時に、企業がビジネスを進める上で、依存している生態系サービスの開示を要求し、自然関連の財務リスクと機会の開示を求めるものとなります。

 このTNFDは、2021年のG7サミットにおいてケンブリッジ大学のパーサ・ダスグプタ経済学名誉教授が執筆した『生物多様性の経済学/ダスグプタレビュー』[1]が取り上げられたことをきっかけに、企業が自然資本を考慮して事業に組み込んでいくことが重要であるとして、注目されるようになりました。

 また、2050年の「自然と共生」する世界を実現するビジョンを掲げ、2020年までに取り組むべきとした「愛知目標」が未達になった結果を受け、2022年に開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、愛知目標に次ぐ2030年までの新たな目標として、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されたことも、TNFDの開示要求を後押ししました。

 こうした流れの中で、“自然版TCFD”とも言えるTNFDがすでに公表している『TNFDベータ版 v0.3』[2]に次いで、2023年9月には内容が確定された最終版『TNFD v1.0』がリリースされるということで、TNFDが企業にどのような影響を及ぼすのか、関心を集めるようになったのです。


[1]The Economics of Biodiversity: The Dasgupta Review

[2]TNFD 自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク ベータ版 v3.0

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この記事の著者

尾山 耕一(オヤマ コウイチ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

吉村 布子(ヨシムラ タエコ)

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