東京大学、ソフトバンク、および小田急電鉄は2022年12月より、「次世代AI都市シミュレーター」の実証実験の対象エリアを、小田急線海老名駅周辺の一部の商業施設から同駅周辺エリアまで拡大して開始したと発表した。
次世代AI都市シミュレーターは、東京大学とソフトバンクがBeyond AI 研究推進機構の研究テーマの1つとして、2021年4月から小田急電鉄と協力して研究開発に取り組んでいるもの。これまでの研究開発では、現実空間での人流・交通・購買・来訪者などの匿名化された属性データとデジタルツインの技術を用いて、デジタル空間上に海老名駅周辺エリアを再現し、インセンティブ(動機付け)が行動変容を促す効果を検証しているという。
これまでの実証実験では、商業施設「ViNAWALK(ビナウォーク)」内に設置したビーコンやデジタルサイネージなどを活用し、行動変容への動機付けとして施設の来館者に役立つ情報などをタイムリーに配信し、効果を検証してきた。この検証結果を基に、商業施設への来館者数や売上向上の効果を予測し、複数の店舗での購買やイベント後の購買などの行動変容を促す人流誘導アルゴリズムの開発、デジタルツインを活用したシミュレーション結果の可視化などを実現したと述べている。
同実証実験では、次世代AI都市シミュレーターのデータなどを活用し、イベントの集客や購買、店舗運営の効率化を促進することで、都市全体の暮らしやすさの向上や地域経済の活性化を図るほか、フードロスの削減や省エネルギーなど、サステナブルな都市づくりに向けた課題解決も目指すとしている。
また、同実証実験の新たな取り組みとして、人流誘導の効果の向上を目指して、実証実験の対象地域を海老名駅周辺を含めた地域に拡大するとともに、この地域を訪問する人、居住者や勤務者なども対象にするという。対象エリア内にある商業施設への来館者には優待やイベント情報を、マンションの居住者には買い物に使えるクーポンなど日々の生活に密着した情報を、オフィスビルの勤務者向けには飲食店の混雑予測情報などを、それぞれ提供すると述べている。
ユーザーの属性に合わせて最適な情報を提供することで、食事や買い物を快適する仕組みを構築。情報提供は、商業施設のLINE公式アカウントやサイネージなどを通して実施するという。
また、予測情報の提供の対象者を拡大し、「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」の商業施設に入居中のテナントに対して、人流の予測情報を同実証実験専用のLINEアカウントで提供。テナント側はこの情報を基に、スタッフの勤務シフトや配置の最適化、商品や材料の仕入れや在庫管理、空調の管理などを効果的に行える。これにより、飲食店におけるフードロス対策や施設の節電などにつなげるとしている。提供情報などについて、テナント側の感想を簡単にフィードバックできる仕組みを構築し、その結果を基に、有益な情報を配信するサイクルを確立すると述べている。