IDEOトム・ケリー氏が語る「ビジネスマンだった私が、クリエイティビティを身につけるためにしてきたこと」

特別鼎談・前編:IDEOトム・ケリー氏 × 入山章栄氏 × 佐宗邦威 氏

 入山章栄氏と佐宗邦威氏がイノベーションとクリエイティビティを包括的にとらえようとする本連載。今回は、「世界で最もイノベーティブな会社」に選ばれる、世界的なデザインコンサルティング会社「IDEO」の共同経営者のトム・ケリー氏だ。ベストセラー『発想する会社!』『イノベーションの達人!』『クリエイティブ・マインドセット』の著者としても知られる同氏だが、意外にもそもそもは会計事務所やコンサルティング会社で働いた経歴を持つ。自身がそのクリエイティブな素養を身につけるには、紆余曲折もあったようだ。前編は、普段のメディアでは視られない、ケリー氏の意外な一面と、同氏がどうやってクリエイティブの素養を身につけたかを語っていただく。

[公開日]

[語り手] トム・ケリー 入山 章栄 佐宗 邦威 [画] 清水 淳子 [訳] 山田 恵子 [取材・構成] 伊藤 真美 [編] BizZine編集部

[タグ] タレントマネジメント デザイン思考 ダイバーシティ メンター

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異なる誰かとの協働から生まれるイノベーション

佐宗(株式会社biotope 代表取締役/イノベーションプロデューサー):
 私はかつてP&Gでマーケティングを担当するビジネスマンでしたが、その後デザインを学び、日本の大手電機メーカーを経て、現在はイノベーションファームを創業しました。ですから、「デザイン思考」を掲げ、世界的デザイン企業「IDEO」の経営者でありながら、もともとはビジネスの世界にいらしたケリーさんに、いつかはお話をうかがいたいと思っていたんです。

トム・ケリー(IDEO 共同経営者、以下、ケリー):
 それは光栄ですね。お会いできてうれしいです。

入山(早稲田大学ビジネススクール准教授):
 この本連載では、佐宗くんと私で「どうしたら日本をもっとクリエイティブにできるか」「イノベーションをどうやって体系立てて考えるか」という疑問を探求しています。ビジネスのバックグラウンドを持ちながらデザイナーである佐宗くんと、経営学者である私の二人の視野を合わせて、様々なイノベーション・クリエイティブの第一人者の方々と議論することで、気づきが得られるのではないか、と考えています。

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ケリー:
 とても興味深い取り組みですね。なんといっても、すばらしいのが「一人でやろうとしていないこと」でしょう。一人の人間が、あらゆる資質をすべて備えている必要はないのです。たとえば、「IDEO」の顧客であるドナ・ダビンスキー氏(パーム・コンピューティング社の創業者)は非常に優秀なビジネスパーソンですが、才能豊かな技術者であるジェフ・ホーキンス(共著に『考える脳 考えるコンピュータ』)と組むことでパーム・コンピューティングを創業し、その後ハンドスプリング社を創業し、最終的にはヒューレット・パッカードに何十億ドルという評価額で買収されました。二人はそれだけの価値を生み出したことになります。

 この成功は、二人がそれぞれ自分の専門分野を持ちながらも、互いに上手く協働したからこそなし得たことです。得意分野が異なる人同士が協力し合えば、大きな成功が得られる可能性が高まる。アップル社のスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックもそうでしたよね。

佐宗:
 (トム・)ケリーさんと、そのお兄様で共同経営者であるデイヴィッド・ケリー氏との関係も、今お話いただいた例によく似ていますね。

ケリー:
 ええ、兄は幼い頃からクリエイティブで、学生時代の好きな科目は美術でした。大人になってからも、兄はクリエイティブな人生を過ごしてきました。私は兄を心から敬愛していますが、でも彼は根っからがクリエイティブ畑の半生を歩んで来たので、ビジネスパーソンにはあまり参考にならないでしょうね(笑)。他方で私は会計事務所に勤め、GEに移った後MBAを取得し、その後、経営コンサルタントになり、さらに、カンタス航空( Qantas Airways )がクライントであったコンサルティング・ファームに勤め、ようやくIDEOで働き始めました。経営コンサルタント時代には5年間、ほぼ全ての時間を電卓で紙の上で表計算をしていたんですよ。

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