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組織戦略としてのデザイン

日立製作所のデザインセンタが辿り着いた組織構造──デザイナーと研究者がハブになる研究所文化とは?

ゲスト:株式会社日立製作所 研究開発グループ デザインセンタ 谷崎正明氏、丸山幸伸氏

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 本連載では、先進企業のデザイン組織への取材を通じて組織変革の担い手としてデザイン人材が今後果たし得る可能性やそのあり方を探っていく。今回取り上げるのは、2023年4月に組織改編したばかりの日立製作所研究開発グループ デザインセンタ。前編では体制刷新に併せて行ったという彼らの「デザインの再定義」「デザイン人財の行動様式」について、研究者出身の谷崎正明氏(センタ長)とデザイナー出身の丸山幸伸氏(主管デザイン長)に聞いた。連載ナビゲーターは、武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科 教授で、ビジネスデザイナーの岩嵜博論氏。

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日立製作所のデザイン組織における「デザイン人財」の定義

岩嵜博論氏(以下、敬称略):2023年4月に組織改編した新体制について伺いたいです。デザインフィロソフィーとして提唱する「Linking Society」の内容と、設定の背景についても併せて聞かせてください。

谷崎正明氏(以下、敬称略):新しいデザイン組織の名称は「研究開発グループ デザインセンタ」。その名の通り、研究開発部門に所属しています。

岩嵜:デザイン組織が研究開発部門に属する形自体が珍しいですよね。

谷崎:デザイン組織が国分寺に創設された当時は、白物家電が主力だった時代であり家電事業部に属していて、研究開発部門とは別でした。その後、デザインの対象が家電以外に広がるのに伴って本社直轄のデザイン研究所として全社事業に貢献する役割に拡張されましたが、デザイン組織と研究開発部門は一緒になったり独立したりという変遷がありました。現在につながる「研究開発×デザイン」を狙って研究者とデザイナーが一つの組織に属する体制になったのは2015年のことです。

 当時の組織名は「社会イノベーション協創センタ(Global Center for Social Innovation 以下、CSI)」。リーマン・ショック以降、弊社は選択と集中により社会イノベーション事業に注力していく経営方針になりました。経営戦略の転換における一つのキードライバーとしての役割を担うための体制とも言えます。

岩嵜:経営が社会イノベーション事業にシフトしていくのに伴う体制変更だったと。

谷崎:「Linking Society」というフィロソフィーもCSI時代に私の前任のセンタ長の声がけで、現場主導で議論を進めステートメントを設定しました。社会や生活者の変化の兆しをいち早く察知し、それを起点に、顧客企業との協創により社会善となるビジネスを作っていく。そのために社内外のさまざまな点と点を結ぶことを「Linking Society」というフィロソフィーで表現しています。

 今日の本題に通じる話ですが、これは言い換えれば、デザイン人財の役割を「狭義のデザイン」に閉じずに「広義のデザイン」を担うのだと再定義したということでもあります。

 デザインセンタにはいわゆるデザイナーのほかにも工学系、理学系、心理学系、社会学系、なかには宇宙関連などのさまざまな研究者が在籍しています。上記のように、あらたなデザインの価値を生み出すには専門分野も考え方も違うこうした多様な人財がいい塩梅に混ざり合う必要がある。そのために共通する行動様式を定めたいという背景がありました。

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この記事の著者

鈴木 陸夫(スズキ アツオ)

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