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組織戦略としてのデザイン

両利きの経営に「デザイン人材の統合能力」がなぜ必要なのか──デザイン思考の限界を語る前にすべきこと

ゲスト:武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科 教授 岩嵜博論氏

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デザイン組織は「要塞」から「街の広場」へ

——「デザイン経営宣言」以降の5年間で、大企業の中のデザイン部門やデザイナーの役割はどう変わってきましたか。

 2022年4月にマッキンゼーが公開したレポートが参考になるのではないでしょうか。タイトルは「Redesigning the design department[1]」。全編英語、約38ページのレポートです。

 ページを送ると、最初のコピーには「The best corporate design departments are transforming from fortified castles into vibrant town squares.」とあります。優れた企業のデザイン部門は「要塞のような城」から「活気ある街の広場」へと変貌を遂げているというのです。

 かつての企業のデザイン部門のイメージは「洗練されたかっこいいオフィス」「カジュアルな服装をしたデザイナー」「しかしがっちりとセキュリティが守られていて、カードキーを持った限られた人しか中に入ることができない」といったものでした。けれども、それは過去のものになりつつあるといいます。

 新しいデザイン部門は、もっと開かれたものになる。組織の中のいろいろなところに入り込み、人と人、部門と部門をつなげる役割を担うようになっていくのではないか、という仮説が書かれています。

 しかも、これはマッキンゼーによるレポートですから、定量的な検証もなされています。デザイン部門のあり方が古典的な企業(「要塞のような城」)と、新しい形式を取っている企業(「活気ある街の広場」)とでは、後者の方が財務上のパフォーマンスが高い、とも書いてあります。

 このレポートが示唆するように、企業の中のデザイナーの役割は今、大きな過渡期にあります。プロダクト・サービスの作り手という役割から、変革リーダー、チェンジメーカーとしてのデザイン人材へ。そういう方向に可能性を拡張しつつあると考えられます。

——企業におけるDXや新規事業開発などの変革イシューでは、「両利きの経営」における探索能力の獲得などが求められていますね。

 「両利きの経営」の一番の功績は何だったのかと改めて考えてみると、それは「探索」と「深化」という言葉により、既存事業と新規事業とでは求められるモードが違うと明示したことではないでしょうか。今では、そのどちらにもリソースを注がなければいけないことに関しては、日本社会にコンセンサスができた印象であり、特に探索能力の獲得とそこで得た能力の既存組織への浸透がテーマになりつつあります。


[1]David Cooney, Asuka Kondo, Garen Kouyoumjian, and Benedict Sheppard「Redesigning the design department」(McKinsey & Company / April 27, 2022)

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鈴木 陸夫(スズキ アツオ)

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