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デザイン思考の「3つのレンズ」が失敗を防ぐ

第2回

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「声」を聴きたい、聴かせたい-社会のためを実現する“キモチ”

3)ニーズ:イノベーションの度合いを左右する・・・電話

 飛行機やミシンのように、イノベーション実現には技術やビジネスモデルが欠かせない。そして、どの程度のイノベーションが起きるかは、人々のニーズに左右される。とは言え、記事の冒頭で紹介したようにニーズの把握は時に難しい。たとえば電話だ。電話は日々の生活に欠かせない巨大な社会的ニーズを持った製品といえる。しかし、電話が実用化された際に、多くの関係者はその価値を理解できなかった。電話の実用化は、グラハム・ベルによって1876年に行われた。

グラハム・ベルと電話 写真.グラハム・ベルと電話                                          電話を完成させた後、ベルは当時通信企業で最大手だったウェスタン・ユニオン社に声をかけた。電話の権利を10万ドルで買い取ってもらうためだ。通信会社なら必ず興味を示すだろう。「ぜひうちで買い取りたい」といった反応が返ってきそうに思える。
 ところが、当時のウェスタン・ユニオン社は、驚くべき先見性のなさを発揮した。「法外な金額」であると考え、ベルの提案を断ったのだ。正確な表現かどうかは不明だが、社内に残っていたメモには「あのようなおもちゃは使えない」と書かれていた そうだ。

 しかし、ここで話は終わらない。幸運なことに、ベルには企業家精神があった。提案を断られて落ち込んでいる暇もなく、自ら電話機を事業化させることにした。1877年にベル電話会社を設立。米国内における電話の普及は、1880年に6万台、93年には26万台と急速に進んだ。

 電話を取り巻く市場が誕生し、多くの人のライフ・スタイルを一新させた。電話は経済的にも社会的にも利益を生みだす製品となったのだ。なぜ電話はこんなにも成功したのだろうか。技術やビジネスモデルが主要な理由ではない。遠くの人とでも音声で会話ができるということに、極めて深い社会的ニーズがあったからだ。ニーズが深ければ深いほど、大きなイノベーションを生み出すことができる。

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3つのレンズ:道具としてのデザイン思考

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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