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デザイン思考の「3つのレンズ」が失敗を防ぐ

第2回

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ライト兄弟 VS ダ・ヴィンチ-飛行機はどちらが発明したのか?そして・・・

1)技術:アイデアを形にする・・・飛行機

 新しい技術のみでイノベーションは起きないが、必要不可欠なものであることに変わりはない。アイデアを形に変える技術の重要性は、飛行機の事例から知ることができる。ライト兄弟とダ・ヴィンチを対比させたい。

 1903年12月17日に、ライト兄弟はアメリカのノースカロライナ州にいた。後ほど世界に名を残すことになる実験を行うためだ。観客はわずか5人。視線の先にはライト兄弟が自作したライトフライヤー号があった。12馬力のエンジンを搭載した飛行機だ。最初の飛行時間はわずか12秒で、飛行距離にして約30m。日本における電信柱の設置間隔ぐらいの距離しかない。それでも、彼らは人類史上初の有人動力飛行を成功させた。

写真.ダ・ヴィンチによるヘリコプターのスケッチ 写真.ダ・ヴィンチによるヘリコプターのスケッチ  実は、ライト兄弟の歴史的快挙から400年ほど前に、すでに動力飛行のアイデアを思いついた人間がいた。『最後の晩餐』や『モナ・リザ』を描き残したレオナルド・ダ・ヴィンチだ。彼は万能人とも呼ばれている。その理由は、絵画以外の分野でも天才的な創造性を発揮したことにある。
 対象は科学や解剖学、工学など多岐に渡り、それらのアイデアはいくつかのノートに残されている

 なかでも興味深いのは、現在ビル・ゲイツが所有者となっている全72ページのレスター(Leicester)手稿だ。そこに書かれているアイデアの1つに、ヘリコプターの原型がある。ライト兄弟による人類初の動力飛行は1903年。一方、ダ・ヴィンチの手稿は1500年頃。いかに彼の創造力が豊かであったかがよくわかる。

 しかし、先見性のあるアイデアを持ってはいたが、ダ・ヴィンチが生きている間に形にすることはできなかった。無理もない。当時はエンジンすら存在していなかったのだ。彼のアイデアを実現させようとしても、技術的に不可能だった。素晴らしいアイデアをノートに書いただけでは、社会に影響を与えることはできない。技術がイノベーションの全てではないが、技術の力によってイノベーションの実現可能性を高めることができる。

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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