“技術の事業化”で大企業のR&D組織が担うべき役割
──「技術が事業化につながらない」という井上さんの課題感がありましたが、他の大企業でも「研究開発(R&D)部門が基礎研究を続けているものの、なかなか事業化につながらない」という似たような声を耳にします。社外での技術探索と、社内でのR&Dのうち、将来的に成果につながりやすいのはどちらだと井上さんは感じていますか。
井上:正直なところ、技術を“基礎の基礎”の段階から育て続ける体力が大企業にあるかというと、現在の日本の環境では、自信を持ってそうとは言い切れないと感じています。目まぐるしい環境変化や業績悪化で研究がストップする恐れがあるなど、リスクが多いです。確実性を重視するなら、基礎研究は事業会社ではなく専門の研究機関でやった方が、時間軸の面でもミッションとの適合性という面でもスムーズだと個人的には考えています。