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横河電機阿部CMOが語る、両利きの経営を実践する三階建ての事業変革と新規事業のずらしのテクニックとは

講演者:横河電機株式会社 常務執行役員 マーケティング本部 本部長 CMO 博士(技術経営) 阿部剛士氏

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中長期戦略の策定までも行う、横河電機のマーケティング本部の戦略的組織体制

 阿部氏は講演冒頭の自己紹介に続き、横河電機の歴史を紹介した。

 1915年に建築家で工学博士の横河民輔が創業してから108年の間に、同社は2度のSIP(Strategic Inflection Point 戦略的転換点)を乗り越えている。1度目は横河ヒューレット・パッカード株式会社の設立を機に、アナログ・メーター等の製造から計測事業に転換した。2度目は今から四半世紀ほど前に制御事業に転換し、それが現在のコア事業となっている。そして「今まさに3度目のSIPに入っている」というのが横河電機の経営層の認識だという。

 重要な戦略的転換点にある同社において、マーケティング本部は非常に幅広い役割を担っている。デジタル・マーケティング、マーケット・インテリジェント、マーコム(広報・広告/Webマーケティング)、ブランディングという一般的なマーケティング業務に加え、中長期事業計画立案、新規事業開拓、R&D、M&A・戦略的アライアンス、特許戦略、標準化戦略、オープンイノベーション、渉外(Government Affairs)、工業デザインも管轄しているのだ。

次の中期経営計画と長期事業構想のコンセプト

 横河電機に経営企画部門は存在せず、中長期戦略の策定をマーケティング本部が主導する。現在は2024年度からの新中期経営計画を立案中だが、2016年からすでに次の3つの要素を重視して策定中だという。

 1つ目は「現在が創業以来3度目の戦略的転換点にある」ということ。それを乗り越えるためにはムーンショットを打つ必要があると認識している。2つ目は「次の大きな柱となる新規事業を立ち上げる必要がある」ということ。そのためには世界的課題に取り組まなければいけない。3つ目は「今が予測不可能なVUCAの時代である」ということ。これら3つの要素から、組織や組織文化、マインドセットの改革を迅速に進めていくことが求められているという認識だ。これらの課題に取り組むため、マーケティング本部が主導的な役割を果たすこととなる。

 大きな新規事業を立ち上げるにあたり、同社は事業の在り方として、世界的課題を対象とするためにSDGsに注目した。2016年には17のゴールを分析し、同社のコアコンピテンスに立脚して11のゴールに貢献していくという可能性を示唆した。そのコアコンピテンスとは、「Measurement(センシングテクノロジーにより、見えないものを可視化する技術)」「Control(プラントのシステムに代表される制御技術)」「Information(オペレーショナル・テクノロジーに関わる情報技術)」の3つだ。これらを活かして世界的課題に挑戦するにあたり、2017年の秋には3つのサステナビリティ目標も打ち立てた。環境においては「Net-Zero Emissions」、社会においては「Well-being」、経済においては「Circular economy」をゴールとして数値的目標も定め、2050年に向けて達成を目指していくという。

 中期経営計画よりも長い視点での長期事業構想も、マーケティング本部が主導して策定している。2021年に抜本的に見直した長期事業構想においては、「Biology(バイオロジー)」「Universe(宇宙)」「Oceans(海)」の3つをテーマに据えた。まずはバイオロジーから着手し、これについてはすでに(長期事業構想の領域を)卒業した。宇宙に関しても、そろそろ事業化に入ろうかというところだという。現在は新たに防災というテーマを加え、長期視点で探索を行っているところだ。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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