トレードオフの関係にある2つの「自由と社会契約」
樫田:前著である『資本主義に出口はあるか』(講談社現代新書)は、ロックとルソーの自由観の違いの確認から、新しい社会のあり方へと議論を進められていました。そこを少し解説いただけますか。
荒谷:そうですね。ロックやアダム・スミスは、個人がそれぞれに考えて活動することを「自由」と捉え、そうした個々の活動が競争状態に入ることで、社会全体の方向性が自然と決まっていくと考えていました。しかし、これでは弱者の意見が反映されづらく、人気のあるものや強いものが常に優先される社会になります。その結果、特定の人にとっては「自由」が阻害される事態を招きます。