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二項対立を超え、未来を構想する

WiseVine吉本氏と語る、自治体DXの進め方──“半歩外か、半歩中の人”が組織を変える

【第4回・前編】ゲスト:株式会社 WiseVine 代表取締役社長 吉本翔生氏

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 デジタル庁のHead of Unit, Fact & Dataである樫田光氏が識者や実践者との対談を通じて、既存の組織の中から新たな価値を生み出す方法を探る本連載。今回は、2024年4月に自治体向けの経営管理システム「Build & Scrap」をリリースし、行政コストの削減と予算編成の質の向上をサポートするWiseVineの吉本翔生 代表取締役社長をゲストに迎えた。前編では、気候変動分野のコンサルタントとして活躍していた吉本氏が、なぜ地方自治体の改革に携わるようになったのか、「データの可視化」の重要性に気づいた経緯とスタートアップでありながら自治体の中に入り込んで改革を進めてきたプロセスについて詳しく聞いた。

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気候変動政策の最前線にいながら感じたおおきな課題

樫田光氏(以下、敬称略):僕は、吉本さんの一歩ずつ前に進んでいく現実的な部分と、その先にある大きなビジョンとのバランス感覚に感銘を受けていて、この対談を楽しみにしていました。まずは、これまでのキャリアと今やっていることを紹介してもらえますか。

吉本翔生(以下、敬称略):ありがとうございます。僕は大学院で気候変動政策について学び、卒業後はシンクタンクに入りました。最初は全く関係ない分野の仕事をしていたのですが、2〜3年目くらいからは大学院時代の人脈で気候変動関連の案件を取ってくるようになりました。当時、そのくらいの若手で案件を取ってくるというのは珍しかったので評価もされたのですが、だんだんとやりがいを感じられなくなってきて(笑)。

樫田:どうしてですか。

吉本:毎年COP(気候変動枠組条約締約国会議)にも参加していましたが、なかなか議論が進んでいかない。しかもUNDP(国連開発計画)やUNEP(国連環境計画)、世界銀行など、何十とある国際機関が気候変動に関する同じような補助金を出しているんです。そして横の連携がない。これは日本で国交省と農水省と環境省と経産省がバラバラに似たような補助金を出しているのと同じ状況です。

 このような状況を、実際に課題を抱えている途上国の人たちは知りません。ここに情報のギャップがあって、補助金コンサルみたいな人たちが暗躍します。僕も補助金コンサルをやっていて、自分でやりながら「これってどうなんだろう」と感じていました。

 こういう無駄は、お金だけでなく人や情報でもありました。例えば気候変動のためのシーズリストや技術リストなんかをUNEPが作り、UNDPが作り、世銀が作り……とやっているけれど、全く連携していないという。

樫田:なるほど。

吉本:今でもおぼえていますけど、2016年のCOPに出るためにマラケシュのホテルに泊まっていたときのことでした。夜中2時くらいかな、バッと起き上がって、「この状況をどうにかしよう」と、急に思い立ちます。ヒト、モノ、カネがバラバラな状況じゃ駄目だ、まずはこれをひとつのデータベースにしよう、それだけでもだいぶ良くなるはずだ、と。

 それを所属していたシンクタンクの上長に提案したところ「いいね」とは言われたのですが、「空いている時間でがんばって」と。戦略コンサルやりながら、空いた時間ってなかなかないんです。ということで、退路を断ち起業することにしました。

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やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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