“睨みの利く”部門出身者の抜擢が必要
真畑:ITやコンサル、金融といった非ドメインの事業者にとって、サプライチェーンにまつわるビジネスチャンスはどこにあるとお考えでしょうか。
小野塚:過渡期では、これまでと違うやり方が必要になります。そのような場面でコンサルは力を発揮しますし、我々を含め、今はとても価値を見出していただきやすい状況にあると思います。
ITに関しては、サプライチェーンにおける定期的なデータの収集にデジタルツールを使う余地があると考えています。たとえば積載率などのデータをデイリーで把握することで、課題が定量的に浮かび上がり、荷主企業や物流会社は改善できるようになります。こうした取り組みはデジタルの得意とするところですし、ビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。
真畑:CLOの選任義務化の話がありましたが、日本企業にCLO経験者はほぼいません。新しい役割をすべて一人で務められるわけではなく、組織として支えていく必要があるのではないかと思います。その点、どのように取り組んでいけばいいか、お考えはありますか。
小野塚:CLOの業務を担うチームを作ることが1つのポイントです。収集したデータや情報をもとに改善の施策を考え、関係部署と調整をして実行するのは、一人では難しいでしょう。一方で誰もできないかというとそんなことはなく、たとえば経営企画など、会社全体を見て最適化を考えた経験をもつ人間はいるはずです。物流、サプライチェーンを改善するというのは、収益構造改革だと見ることもできますし、これまでの経験を活かせるメンバーもいると思います。
そのなかで誰をCLOに据えるかですが、製造部門の力が強い会社では製造部門出身者、販売・営業が強い会社では販売部門や営業部門の出身者がCLOを務めることをお勧めしています。“睨み”が利く人にCLOになってもらい、そのチームの言うことがきちんと通る体制で運営していく。これが最も大切です。
真畑:米国では、トランプ政権が再度誕生することになりました。トランプ氏は既に中国への関税を強化するなどの方針を掲げていますが、こうした施策がグローバルのサプライチェーンへどう影響を及ぼすか、またその対策など、考えをお聞かせください。
小野塚:既にご相談いただいているケースもありますが、メキシコからの輸入が規制されるのではないかと見込んでいます。他は中国やブラジルなども、トランプ氏の政策の影響を受けるでしょう。どのような関税が実施され、それが企業の生産や調達などにどう影響を与えるか、実際に起きないとわからない面もありますが、既出の情報からある程度想像できる部分もあります。それをもとにリカバリープラン、プランBを用意することがポイントではないでしょうか。
そこで大切なのは、普段から一部、プランBを活用するということです。通常は海上輸送が主だけど、定期的に航空輸送も行うといったことですね。いざとなったときに使えないのでは困ってしまうので、訓練をしておくようなイメージです。